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【ネタバレなし】実写『リロ&スティッチ』はひどい?原作ファンが観るべき理由と3つの大きな違い

映画『リロ&スティッチ』基本データ

  • 原題: Lilo & Stitch
  • 監督: ディーン・フライシャー・キャンプ
  • 主要キャスト:
    • マイア・ケアロハ(リロ)
    • シドニー・アグドン(ナニ)
    • クリス・サンダース(スティッチの声)
    • ザック・ガリフィアナキス(ジャンバ)
    • ビリー・マグヌッセン(プリークリー)
  • 日本公開日: 2025年6月6日
  • 上映時間: 115分
  • 視聴方法(2025年6月現在):
    • 全国の劇場で公開中

この記事でわかること

  • 近年のディズニー実写化の中でも「かなりの出来」と評される本作の全体的な感想
  • スティッチやエイリアンたちの見事な実写化と、それが物語に与えた「意味」
  • 原作アニメからの改変点と、それが「ノイズ」にならなかった個人的な理由
  • 海外の批評家やファンの間で物議を醸している、より大きなテーマの変更点とは
  • 安心して楽しめる良作である一方、「卓越してはいない」と感じた正直なポイント

はじめに

こんにちは。当ブログ『ねことシネマ』へようこそ。 数ある映画ブログの中から、この記事を見つけてくださって本当に嬉しいです。

今回は、2025年6月6日に日本でも公開が始まったディーン・フライシャー・キャンプ監督の映画『リロ&スティッチ』をご紹介します。

実は公開前から、本国アメリカでの評判がものすごく高くて、批評家スコア(Rotten Tomatoes)も観客スコアも非常に高いと聞いていました。正直、最近のディズニー実写化作品には、『白雪姫』の件をはじめとして「なんだかなぁ…」と感じることが多かったんです。色々な事情や圧力が働いて、本来やりたかったであろうことが不完全燃焼で終わっているような印象を受けることが多くて…。

だからこそ、過去の「やらかし」を押しのけてまで絶賛されている本作には、「これは期待できるかもしれない!」と、公開を心から待ちわびていました。

…と、期待に胸を膨らませて公開日に鑑賞したのですが、本編とは別のところで、ちょっと忘れられない出来事がありまして。ここ数年で観た映画の中で、ぶっちぎりで劇場マナーが悪かったんです。詳しいお話はここでは控えますが、皆さんも映画館での鑑賞マナーは、ぜひ大切にしていただけたらなと思います。

そんなわけで、少し集中力を削がれながらの鑑賞となってしまいましたが、それでも「良かった」と思える作品でした。今回は、そんな個人的な映画体験も踏まえつつ、本作の魅力や気になった点について、正直な感想をお届けできればと思います。

(C)2024 Disney Enterprises, Inc. All Rights Reserved.

あらすじ

ハワイのカウアイ島に住む少女リロは、事故で両親を亡くし、姉のナニと二人暮らし。まだ若すぎるナニは、リロを一人で育てようと懸命に奮闘しますが、失敗ばかり。社会福祉士からは、このままでは二人を離れ離れにしなければならないと告げられてしまいます。

そんな姉妹の前に現れたのは、見た目は青くて可愛らしいのに、とてつもなく暴れん坊な不思議な生き物。

その正体は、遠い宇宙の果てで、違法な遺伝子操作によって「破壊」だけをプログラムされた危険な生物「試作品626号」でした。そんなことはつゆ知らず、リロはその生き物に「スティッチ」と名付け、家族として家に迎え入れます。

予測不可能なスティッチの行動は、平和な島に次々と混乱を巻き起こしますが、その出会いはやがて、希望を失いかけていた姉妹の心に思いもよらない奇跡を呼び起こしていくのです。

本作は、2002年に公開され、今なお根強い人気を誇るディズニーの同名アニメーション映画を原作としています。

※以下、物語の核心に触れる内容(ネタバレ)を含む可能性がありますのでご注意ください。

作品の魅力:愛すべきエイリアンは、実写の波を乗り越えられたのか

鑑賞を終えた率直な感想は、「まあ良かった」。集中を削がれたことを差し引いても、ここ数年のディズニー実写化作品の中では、かなり出来の良い一本だと感じています。では、具体的にどこが良くて、どこに物足りなさを感じたのか。いくつかのポイントに分けて掘り下げてみたいと思います。

なぜ実写化するのか?――その答えはエイリアンの「異質感」にあった

正直に言うと、鑑賞直後は「良くも悪くも無難な実写化だな」という気持ちが否めませんでした。ただ、改めて考えてみると、この映画には「実写化したからこその意味」がはっきりと存在したように思います。

その最大のポイントが、スティッチをはじめとしたエイリアンたちの圧倒的な「異質感」です。

2002年のアニメ版では、人間もエイリアンも同じ「2Dアニメ」という平面の世界に住んでいました。だからこそ、ジャンバやプリークリーが人間の女性に変装してドタバタ劇を繰り広げても、それは「アニメのお約束」として自然に受け入れられたわけです。

しかし、現実に人間が暮らす実写の世界に彼らを置くなら話は別。人間とは明らかに異なる存在、この世界から浮いているような、ともすれば「不気味」「気持ち悪い」と感じさせるほどのルックでなければ、説得力がありません。

その点、本作は本当に見事でした。スティッチのモフモフした質感、ジャンバ博士の巨体、プリークリーの一つ目の造形…。彼らがハワイの美しい風景の中にいると、本当に「こういう生物が宇宙のどこかから迷い込んできたのかも」と思わせてくれるリアリティがありました。このあたりのVFX技術の高さは、さすがディズニーと唸らされます。

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この「ルック的な異質さ」こそが、実写版『リロ&スティッチ』の核心。アニメでは表現しきれなかった、「人間社会に紛れ込んだ異物」としてのエイリアンの存在感を、これ以上なく際立たせていたと感じます。

成り立たなくなったコメディと、その新しいアプローチ

エイリアンの「異質感」を追求した結果、原作アニメで描かれたコメディの一部は、実写では成り立たなくなってしまいました。

特に象徴的なのが、スティッチを追ってきたジャンバとプリークリーの「変装」です。アニメでは、二人が人間の服を着て、ぎこちなく人間社会に溶け込もうとする姿が大きな笑いを生んでいました。しかし、あれだけ異質なルックの彼らが服を着たところで、実写ではどう見ても「不審者」です。コメディとして成立させるのは難しいでしょう。

実写化にあたり、この問題をどう解決するのか?というのが個人的な注目ポイントだったのですが、本作は原作にはない改変で、この課題にアプローチしていました。「なるほど、実写でコメディとして成立させるには、こういうやり方もあるのか」と、素直に感心させられた部分です。

ただ、本作について少し調べてみると、海外のファンや批評家の一部からは、この変更によってジャンバとプリークリーのコメディ要素が「骨抜きにされた」という意見もあるようです。確かに、原作のあのドタバタ感が好きだった方にとっては、少し物足りなく感じるかもしれません。

原作からの「改変」はノイズか、深みか?

最近のディズニー実写化ではおなじみですが、本作にも原作アニメにはなかった設定やキャラクターの変更が加えられています。これに対して批判的な意見が出るのもよく分かりますが、私個人としては、今回の改変は「割と、ありなのかな」と感じました。

例えば、ナニに「海洋生物学を学ぶために大学へ行きたい」という具体的な夢が設定されていたり、ご近所さんとの交流が増えていたり。こうした追加要素は、アニメでは描ききれなかったキャラクターの背景に深みを与え、物語をより豊かにしていたように思います。

「今、この時代に再映像化するにあたって、アニメを完全にトレースするだけでは意味がない」という制作陣の意図も理解できますし、その改変が物語の邪魔になっていなければ、私は歓迎したいタイプです。本作の変更点は、物語のオチや本質的なテーマを覆すものではなく、むしろキャラクターの解像度を上げる良いスパイスになっていたのではないでしょうか。

ただし…物議を醸している大きなテーマ変更も

一方で、より大きな視点で見ると、今回のリメイクには海外の熱心なファンの間でかなり物議を醸している変更点もあるようです。関連する批評に目を通してみると、特に指摘されているのが物語の核である「オハナ(家族)」の概念の扱われ方です。

原作アニメの強烈な魅力の一つは、どんな逆境にあっても「家族は、誰も置き去りにしない」という“オハナ”の原則を、ナニが命がけで守り抜く姿にありました。しかし、今回の実写版では、そのナニの行動や、彼女たちを取り巻く社会福祉のあり方に、原作とは異なる解釈が加えられているとのこと。一部では、それが「オハナの精神への裏切りだ」とか「原作が持っていた社会的なメッセージ性を薄めている」といった、かなり厳しい批判も出ているようです。

こうした点は、カジュアルに楽しむ分にはあまり気にならないかもしれませんが、原作に深い思い入れのある方にとっては、看過できない「改悪」と感じられる部分なのかもしれません。

何よりも、リロとスティッチが最高に輝いている!

様々な改変や論争はありますが、それでもこの映画が「良かった」と断言できる最大の理由。それは、主人公のリロとスティッチが、とてつもなく魅力的だからです。

リロを演じたマイア・ケアロハの、悲しみや孤独を抱えながらも、それを感じさせないユニークで力強い佇まい。そして、声優を続投したクリス・サンダースによる、破壊衝動と愛されたい気持ちが同居するスティッチの絶妙な表現。この二人の関係性こそが、本作の揺るぎない心臓部です。

多くの批評でこの二人のキャスティングと演技が絶賛されているようですが、それも大いに納得できます。細かい設定変更が気になったとしても、この二人のやり取りを見ているだけで、心が温かくなり、いつの間にか物語に引き込まれてしまいます。

そして何より...理屈抜きでスティッチが可愛い!
『ねことシネマ』としては猫推しですが、今回ばかりはこのモフモフな“宇宙犬”に心を奪われました。寂しげな表情でリロを見つめる姿なんて、思わず胸がキュッとなりますよ。猫好きの方も、きっとこの魅力には抗えないはず。

(C)2024 Disney Enterprises, Inc. All Rights Reserved.

まとめ

映画『リロ&スティッチ』は、「卓越した傑作!」とまでは言えないかもしれませんが、近年のディズニー実写化作品の中では間違いなく「合格点」を付けられる、安心して楽しめる一本でした。

海外で観客スコアが高いのも、多くの人が愛する原作の期待に、高いクオリティで応えようとした誠実さが伝わったからではないでしょうか。原作が好きな方なら、きっとこの実写版も好きになれると思います。

様々な議論を呼ぶ「改変」はありつつも、それを上回るリロとスティッチの魅力、そして「実写化ならでは」の表現が光る作品です。私が観に行った劇場もたくさんの人で賑わっていたので、日本でもきっと大ヒットするはず。

この夏、少し不思議で、最高に心温まる家族の物語に、映画館で触れてみてはいかがでしょうか。

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  • ぜひ、コレクションとして手元に置いてみては?
  • 特典映像も収録とのこと!気になりますねぇ...

最後までお読みいただき、ありがとうございました。 皆さんは、この実写版『リロ&スティッチ』をどう感じましたか?ぜひ、コメントであなたの感想も教えてくださいね!

  • IMDb『リロ&スティッチ』
    キャストやスタッフの詳しい情報、ユーザーからの評価やレビューなどが充実しています。英語サイトですが、作品の撮影秘話やTrivia(トリビア)も多く、さらに深く知りたい方にはおすすめです。
  • この記事を書いた人

HAL8000

映画と猫をこよなく愛するブロガー。 多いときは年間300本以上の映画を観ていて、ジャンル問わず洋画・邦画・アニメ・ドキュメンタリーまで幅広く楽しんでいます。

専門的な批評はできませんが、ゆるっとした感想を気ままに書くスタンス。 ブリティッシュショートヘア×ミヌエットの愛猫ハルも自慢したいポイントで、レビューの合間に猫写真や日常もたまに紹介しています。

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