「もし大切な人を救うために過去へ戻れるとしたら?」──そんなタイムリープ要素を取り入れたラブストーリーが、切なさと笑いを巧みに交えながら展開される話題作です。今回は「坂元裕二脚本だからこそ気になった」という理由で鑑賞した私の感想と、ネット上で見かけた批評を交えつつ、本作の魅力や気になったポイントをまとめます。
映画『ファーストキス 1ST KISS』基本データ
- タイトル:『ファーストキス 1ST KISS』
- 公開年:2025年(日本)
- 監督:塚原あゆ子
- 脚本:坂元裕二
- 主演:
- 松たか子(硯カンナ役)
- 松村北斗(硯駈役)
- 上映時間:124分
- 主な受賞・映画祭出品:情報なし(公開直後のため)
- 視聴方法:劇場にて公開中(配信予定は未定)
この記事でわかること
- 「夫を救うためのタイムリープ」が意外とコメディタッチ
- 過去を変えると未来が変わる“王道タイムリープ”の醍醐味
- 坂元裕二脚本ならではの会話劇と独特のセリフ回し
- 何度も繰り返してもうまくいかないジレンマと“気づき”
- 笑って泣ける“タイムリープ・ラブコメ”という総評
はじめに:重い題材かと思いきや、実は“ラブコメ”!
亡くなった夫を救うためにタイムリープを繰り返す」というあらすじだけ聞くと、かなりシリアスな展開を想像してしまうかもしれません。しかし実際に観てみると、要所要所でコメディ要素がしっかり効いていて、“ラブコメ”として楽しめる部分がとても多い作品でした。
たとえば、冒頭のタイムリープで松たか子さん演じるカンナが高所から落下するシーン。落ちた先にたまたまクッションが置いてあって、さらにそこに若い頃の夫・駈がいる……というコミカルな流れを見たときに、「あ、これはがっつりラブコメなんだ」と思わず笑ってしまいました。

あらすじ
カンナは、結婚生活15年目にして夫・駈を突然の事故で失ってしまう。気持ちがすれ違い、長らく冷え切っていた関係だったが、いざ別れが訪れると、彼が唯一無二の存在だったと思い知らされる。そんな中、カンナは驚くべき方法で過去へと遡るチャンスを手に入れる。そこには、まだ自分と出会う前の若々しい駈の姿があった。もう一度惹かれ合う中で、カンナは「この先に訪れる悲劇を変えたい」という強い思いを抱き、行動を起こすのだった。
ネット上の感想まとめ:安定感と物足りなさが混在?
本作に対する感想や批評をいろいろとネットで調べてみると、大まかに以下の声が目につきました。あくまでも私が個人的に集めたものですので、ぜひ参考程度にご覧ください。
塚原あゆ子監督の演出
- テレビドラマで培われた手堅さが光り、観客に寄り添う安定した作り。
- タイムリープというファンタジー要素を違和感なく織り込むことで、重苦しくなりそうな題材を軽やかにまとめている。
- ただし映画ならではの大きな盛り上がりや意外性は薄く、「もう少し冒険してほしかった」との声も。
坂元裕二脚本の妙
- 恋愛や夫婦のリアルな会話が巧みに描かれ、印象的なセリフが多い。
- 使い古されたタイムリープ設定を夫婦15年目の視点からアレンジし、ありきたりに陥らない工夫がある。
- 一方で、夫の死因の扱いやタイムリープの細かいルール説明などで「詰めが甘い」と感じる人も。
キャストの演技
- 松たか子さんは倦怠期の中年女性から、夫を救うために奮闘する姿まで振り幅大。
- 松村北斗さんは29歳と45歳の夫・駈(かける)を好演し、“初めて出会う”たびの新鮮な反応が好評。
- 脇役の魅力もあるが、夫婦の物語が中心なのでサブキャラの深掘りは最小限。
全体的には「定番だけど笑って泣ける王道作品」という評価が多く、より映画的なダイナミズムを求める人には物足りないところもある、という印象でした。
私の感想:ワクワクが止まらない“タイムリープ大作戦”
ここからは私の個人的な感想をどんどん深掘りしていきます。
やっぱりラブコメ!途中から自己満足のためにタイムリープ!?
死を扱う話だし、夫を救うというシリアスな動機があるから“重めのヒューマンドラマ”かと思いきや、実際はコメディタッチ。私が笑ったのは、「夫を生存させる」という最初の目的が少しブレて、若い頃の夫のあるセリフを聞きたいがためにタイムリープしてしまうシーン。
「いや、そこまでする!?」とツッコミたくなりましたが、意外とこういう“自己満足”な動機が人間くさくて、かえって感情移入しやすかったです。
過去を変えれば未来が変わる…王道だけどワクワクする!
タイムリープもののお約束ともいえる「ある行動が未来を微妙に変える」という展開。具体的には、過去で「とうもろこしは皮をつけたまま茹でると美味しい」と夫に話す→未来(現代)では、その写真のとうもろこしがちゃんと皮付きのまま茹でられている…というくだりが大好物でした。
確かにありきたりかもしれませんが、こういう小さな“変化”が積み重なるのがタイムリープものの醍醐味。どのポイントを変えれば夫の事故死を防げるのか、部屋でビニール紐に付箋を貼りながらシミュレーションするカンナの姿も見ていてワクワクしました。ここは『バック・トゥ・ザ・フューチャー』シリーズでドクが模型を使って作戦会議をするシーンを思い出し、ファンとしてはたまりません。さらに、この付箋が後々もしっかり物語に絡むのが巧い。タイムリープの繰り返しを象徴する小道具になっていて、映像的にも面白い見せ方だと感じました。

繰り返しても、なかなか思い通りにいかない…だからこそ気づけるもの
タイムリープ系では『Steins;Gate』や『魔法少女まどか☆マギカ』など、「何度やってもうまくいかない」ジレンマが定番ですよね。本作でも、カンナが必死に夫を救おうと過去を改変するのに、予想外の出来事や別の原因でうまくいかない。その繰り返しが切ない一方、実は「タイムリープを重ねたからこそ見えてくる大事なこと」があるわけです。
ラストシーンの“あるセリフ”に行き着く流れは、まさに「繰り返しの果てにたどり着く真実」って感じで、私はとても納得しました。詳しくはネタバレになるので言えませんが、このラストのセリフに注目してほしいです。
まさに坂元裕二の真骨頂!?セリフが印象的
坂元裕二さん脚本と聞いて楽しみにしていましたが、やっぱり会話劇の妙がすごい。特に、松村北斗さん演じる駈がプロポーズするシーンで「私はピーであなたは柿」的な比喩が出てくる場面は、まさに坂元脚本らしい独特の空気感がありました。
「え、そこで柿ピー!?」と笑ってしまいつつ、二人の距離感とか食い違いぶりとかが凝縮されていて、印象に残ります。セリフがちょっと突拍子もなく聞こえるところもあるけれど、そこが坂元節の味わいだと思います。
「タイムリープは何度もしている」という説得力とテンポ感の絶妙さ
本作はカンナが何度も過去に飛ぶため、冗長になりがちなところをテンポの良い演出でうまくまとめています。たとえば、カンナが夫を待ち続ける場面で「プール楽しみ!」と言って出かけた子供たちが、すぐ次のカットで「プール楽しかったね!」と帰ってくるところに切り替わる。こうしたジャンプカットがギャグにもなっていて、「どんだけ待たされてるの!?」と笑いつつ、時間の流れを一気に飛ばせるので物語のスピード感も維持している。
一方で、「カンナがどれだけの回数、必死にタイムリープを繰り返しているのか」をあるアイテムを通じて示唆するシーンもあり、単にコメディに流れず“努力の痕跡”を見せているのが上手いなと思いました。テンポ良く話が進むけれど、しっかり積み重ねが感じられるので、カンナの奮闘ぶりに納得がいくんです。
もし“あのシーン”で終わっていたら…?
個人的には終盤の「電話」にまつわるシーンで映画をバサッと終わらせても面白かったかも、と思いました。『インセプション』のラストでコマが回り続けるのか倒れるのか…というような余韻ですね。
もちろん、本作はあくまでラブストーリーなので明確な決着をつけるのが王道ですし、きっぱりとエモーショナルに締めるのが良いという意見もわかります。ただ、あそこで終わるとさらに「この先、どうなったんだろう?」と会話が盛り上がる余地があったかなと。SF寄りになりすぎちゃうかもしれませんけど、ちょっとそんな可能性も妄想してしまいました。
総評:笑って泣ける“タイムリープ・ラブコメ”
結論としては「王道なタイムリープもの」と「夫婦の絆」ががっちり融合した、意外と明るいラブコメ映画だと感じました。死や後悔という重いテーマを扱いつつも、コメディタッチのおかげで見やすく、終盤には“あるセリフ”がしっかり胸に響いてきます。
- 重めの題材だけれど、要所で笑えるコメディがアクセント
- 過去を変えて未来を変える“王道のワクワク感”がたっぷり
- 最後のセリフがすべてを集約し、心にじんわり残る
多少ルール説明のあいまいさや死因の扱いに「?」となる人もいるかもしれませんが、それを差し引いても、鑑賞後には「今、隣にいてくれる大切な人を大事にしよう」という気持ちになれる作品でした。
気になる方はぜひ劇場で確かめてみてください!
公式サイトはこちら:
『ファーストキス 1ST KISS』公式サイト