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【ネタバレあり】鮮血の不死鳥!『REVENGE リベンジ』― コラリー・ファルジャ監督の衝撃デビュー作を徹底解剖!

映画『REVENGE リベンジ』基本データ

  • タイトル: REVENGE リベンジ (原題: Revenge)
  • 公開年: 2017年(フランス・ベルギー合作)、2018年(日本)
  • 監督: コラリー・ファルジャ
  • 脚本: コラリー・ファルジャ
  • 主要キャスト:
    • マチルダ・ルッツ(ジェニファー)
    • ケヴィン・ヤンセンス(リチャード)
    • ヴァンサン・コロンブ(スタン)
    • ギョーム・ブシェド(ディミトリ)
  • 上映時間: 108分
  • 視聴方法:

この記事でわかること

  • 映画『REVENGE リベンジ』のあらすじと基本的な情報
  • コラリー・ファルジャ監督の強烈なデビュー作がなぜ注目されるのか
  • 本作の独特な映像美と、一度見たら忘れられない色彩感覚の秘密
  • 「レイプ・リベンジ」というジャンルにおける本作の新しい視点とフェミニズム的テーマ
  • 主人公ジェニファーの変貌と、観客の視点を巧みに操る演出の妙
  • グロテスクながらもファンタジーとして楽しめる、そのバランス感覚
  • 監督の新作『サブスタンス』に繋がるかもしれない才能の片鱗

はじめに

こんにちは。当ブログ『ねことシネマ』へようこそ。

ところで皆さん、気になる新作映画の監督を見つけると、「この人の他の作品も観てみたい!」って、過去作まで深掘りしちゃうこと、ありませんか?
私もまさにそのタイプで、先日、とんでもなく強烈な一本と出会ってしまったんです!

2025年5月16日に日本公開予定のコラリー・ファルジャ監督の新作『サブスタンス』。第97回アカデミー賞で作品賞をはじめ主要部門にノミネートされ、メイクアップ&ヘアスタイリング賞を受賞したり、第77回カンヌ国際映画祭で脚本賞を獲得したりと、とにかく話題沸騰中なんです。デミ・ムーアが主演女優賞を受賞した第82回ゴールデングローブ賞のニュースも記憶に新しいですよね。

その予告編やテレビスポットを観て、独特の映像美やポップな色使いに「これは何だ!?」と強烈に惹きつけられまして、「この監督は一体何者なんだ…?」と。そこで調べて行き着いたのが、コラリー・ファルジャ監督。そして、彼女の長編デビュー作『REVENGE リベンジ』(2017年)を早速鑑賞してみることに。

鑑賞後の率直な感想は、「観て良かった!」。そして、「これは『サブスタンス』がますます楽しみになるやつだ…!」でした。

今回の記事では、この鮮烈なデビュー作『REVENGE リベンジ』について、私が感じた魅力や、少し専門的な分析で見られるような視点も交えつつ、ライトにお伝えしていきたいと思います。グロテスクな描写も話題になる作品ですが、それだけではない奥深さがあるんですよ。ぜひ最後までお付き合いいただけると嬉しいです。

あらすじ

(※若干のネタバレを含みますのでご注意ください)

若く美しい女性ジェニファーは、裕福な既婚者リチャードとの不倫関係にあり、人里離れた砂漠地帯にある彼の豪華な別荘を訪れます。甘い時間を過ごすはずだった二人ですが、そこにリチャードの狩猟仲間であるスタンとディミトリが合流。当初は和やかに過ごしていたものの、ジェニファーの若さと魅力に目をつけたスタンが彼女をレイプしてしまいます。

リチャードは事件を隠蔽しようとし、口封じのためにジェニファーを崖から突き落とします。誰もが彼女は死んだと思いましたが、奇跡的に一命を取り留めたジェニファー。腹部には致命的な傷を負いながらも、彼女は驚異的な生命力と、燃えるような復讐心だけで立ち上がります。

そして、自分にとどめを刺そうと「人間狩り」を始めた男たちに対し、ジェニファーはたった一人で壮絶な復讐を開始するのです…。

セリフは少なく、容赦ない暴力描写と、息をのむような砂漠の映像美で物語は展開していきます。

(C)2017 M.E.S. PRODUCTIONS - MONKEY PACK FILMS - CHARADES - LOGICAL PICTURES - NEXUS FACTORY - UMEDIA

作品の魅力

さて、この『REVENGE リベンジ』、ただの復讐劇ではない魅力に溢れています。私自身の感想を軸に、この作品のどこがそんなに凄いのか、掘り下げていきましょう。

一度見たら脳裏に焼き付く!強烈な色彩と映像美

まず何と言っても、この映画は映像と色彩のセンスが抜群です。私がコラリー・ファルジャ監督の新作『サブスタンス』の予告編を観て最初に心を掴まれたのも、まさにこの部分でした。

映画の冒頭、どこまでも広がる砂漠の乾いた黄色と、突き抜けるような真っ青な空のコントラスト。このビビッドな色彩が、これから始まる非日常的な出来事を予感させ、観る者に強烈なインパクトを与えます。リチャードの別荘のセットも本当に凝っていて、例えばピンクとブルーを基調とした窓ガラスなど、細部に至るまで計算され尽くした芸術的な絵作りに、私はすっかり見入ってしまいました。こうした視覚的なこだわりが全編に渡って貫かれているので、一時も飽きさせません。

そして、本作の代名詞とも言えるのが「血」の表現。「極彩色の悪夢」とか「食肉処理場並み」なんていう物騒な言葉で語られることもあるくらい、血飛沫が文字通り画面を真っ赤に染め上げます。でも、これが不思議と単にグロテスクなだけじゃなくて、ある種の様式美、ファンタジー的な過剰さとして目に映るから面白いんです。作中に何度も挟まれるアリのクローズアップに、主人公ジェニファーの鮮血がぽたりと滴るシーンなんて、強烈な印象と同時に、どこか寓話的な美しさすら感じてしまいました。

この独特の映像スタイルには、撮影監督ロブレヒト・ハイファールトの手腕も大きく貢献しているはず。その結果、灼けつく砂漠の風景は、ただ美しいだけでなく、危険と隣り合わせの「ハイコントラストの地獄絵図」として、私たちの記憶に鮮烈に刻み込まれます。近年のスリラー映画で、ここまでスタイリッシュな作品はそうそうお目にかかれないのでは?

タランティーノからの影響?過剰な演出の魅力とジャンル映画としての新しさ

この映画を観ていて、私が真っ先に思い浮かべたのは、クエンティン・タランティーノ監督の『キルビル』でした。復讐劇というテーマはもちろんですが、グラインドハウス映画を思わせるような、あの惜しげもない大量の出血シーンや、独特のケレン味に溢れたアクション。そういった部分に、タランティーノ作品からの影響を色濃く感じたんですよね。コラリー・ファルジャ監督自身、『キルビル』シリーズや『マッドマックス』シリーズが好きだと公言しているようなので、特に『キルビル』は監督にとって、かなりインスピレーションを刺激された作品だったんじゃないかなと、勝手ながら想像しています。

本作は、いわゆる「レイプ・リベンジ」というサブジャンルに括られることが多い作品。このジャンル、実は1970年代頃から存在し、被害者が加害者に文字通り「報復」する…という、かなり過激な物語を描いてきました。『REVENGE リベンジ』も、その流れを汲む一本と言えます。でも、この映画が凄いのは、そうしたジャンルの定型的な要素を踏まえつつも、全く古臭さを感じさせないところ。むしろ、そのジャンル特有のお約束とも言える展開を巧みに利用しながら、現代的なテーマ性とシャープな映像センスで、全く新しいエンターテイメントとして昇華させている点に、私は唸らされました。

ある批評で「この映画の小さな奇跡は、定型に忠実でありながらも活力に満ち新鮮に感じさせ、スタイリッシュにまとめ上げつつ性的ポリティクスを有意義に変容させている」と書かれているのを読み、まさに「それな!」と膝を打ちました。

女性監督ならでは?ジェンダー描写と観客を翻弄する“視点”の妙

私がこの映画で最も興味深く、そして巧みだと感じたのは、ジェンダーの描き方と、観客の視線を巧みに操る演出です。

主人公ジェニファーがレイプされ、復讐へと駆り立てられる過程で描かれる、加害者である男性たちの身勝手さや歪んだ特権意識。これが、本当にリアルで、観ていて胸が悪くなるほどの「気持ち悪さ」を伴って迫ってきます。監督は、レイプシーンそのものを扇情的に見せるのではなく、そうした暴力を引き起こす男性たちの内面や関係性に焦点を当てているように感じました。スタンが「誘ったくせに」と言わんばかりに自分の欲望を正当化し、ディミトリが見て見ぬふりをする…こうした描写は、観客に強烈な不快感を与えるのですが、それこそが監督の狙いであり、女性監督だからこそ描き得たリアリティではないでしょうか。

そして、この映画の構成がいかに巧みか、という話です。観客の感情移入と視点の動きが、実に見事にコントロールされているんです。

物語の序盤、別荘のシーン(レイプされる前まで)では、ジェニファーはどこか挑発的で、その性的な魅力で男性たちを翻弄するような存在として映し出されます。カメラも彼女の体を執拗に追い、観客は否応なく、作中の加害男性たちと同じ「性的対象として彼女を見る」視点に立たされてしまう。これは明らかに意図的な演出で、正直なところ、観ているこちらもジェニファーの奔放な振る舞いに少し戸惑ったり、「そんな格好して大丈夫…?」なんて思ってしまう瞬間があるかもしれません。

しかし、彼女が裏切られ、崖から突き落とされた瞬間から、映画の視点は劇的に反転します。

生き延びたジェニファーが、血と泥にまみれながら復讐者として立ち上がると、今度はカメラが彼女の主観にピタリと寄り添い、観客はジェニファーと共に男たちを追い詰める側へと感情をシフトさせるのです。序盤で感じたかもしれない、ジェニファーへのある種の加害者的な視線は消え去り、完全に彼女に感情移入し、その復讐を心の底から応援したくなる。この男性中心の視点(いわゆるメイル・ゲイズ)から鮮やかに脱却し、反転させてみせる手腕こそ、本作が内包するフェミニズム的テーマの核心。多くの映画ファンや批評家が絶賛するのも頷けます。

(C)2017 M.E.S. PRODUCTIONS - MONKEY PACK FILMS - CHARADES - LOGICAL PICTURES - NEXUS FACTORY - UMEDIA

アダムとイブ? 終盤の決闘シーンに込められたメッセージとは

(※ここからはクライマックスのネタバレに触れます)

物語は、ジェニファーが自分を襲った男たちを一人、また一人と血祭りにあげていき、最終的に不倫相手であり、彼女を裏切った張本人であるリチャードとの直接対決へと雪崩れ込みます。このラストバトルが、また息をのむほど強烈なんです。

夜明け前の薄暗い別荘――かつて彼女が襲われた、因縁の場所です――で、リチャードは全裸、ジェニファーもほとんど裸に近い姿で、ショットガンを手に壮絶な殺し合いを繰り広げます。この描写を観た時、私はふとアダムとイブのイメージを思い浮かべました。男女という性差や、彼らがまとっていた社会的立場といったものが全て剥ぎ取られ、ただ「人間」として、生きるか死ぬかの原始的な対峙をしているように見えたのです。

そこには、「男も女も、結局は同じ人間である」という、ある種の根源的なメッセージが込められているのではないでしょうか。

序盤では男性の視点からジェニファーを一方的に「消費」するかのように描き、中盤以降は女性(ジェニファー)の視点から男性への怒りと復讐を徹底的に描く。このように、両方の立場を観客に体験させることで、この最後の「人間 対 人間」の戦いが、より一層深い意味を持ってくるように感じました。全裸での追いかけっこは、血で床が滑るという、どこかブラックユーモアすら感じさせる状況ですが、それを高度な撮影テクニックで緊張感あふれるスペクタクルに仕上げている手腕は見事としか言えません。「スリルとユーモアが同居する白眉のシーン」という評価も、まさに的を射ています。

さらに、最終決戦の舞台が、ジェニファーが最初に襲われたリチャードの別荘であるという円環構造。これもまた、唸るほど巧みな設定です。同じ場所で、かつての被害者と加害者の立場が完全に逆転する。この構図が生み出すカタルシスは凄まじく、「リベンジ」というテーマに強烈な説得力を与えていると、私は強く感じました。

不死鳥は蘇る!グロテスクとファンタジーの絶妙な融合

本作はR15+指定ということもあり、確かにグロテスクな描写は多めです。血が苦手な方は、ちょっと覚悟がいるかもしれませんね。特にジェニファーが崖から突き落とされ、木の枝が腹部を貫通するシーンや、その傷を自分で治療するシーンは、目を覆いたくなるほど痛々しいです。

でも、映画全体を通して観ると、不思議と不快感だけが残るわけではないんです。むしろ、この物語はファンタジーの要素が非常に強いと感じました。「神話的な寓意性を重視している」とか「あえて誇張された復讐ファンタジーとして描いている」といった分析を目にしましたが、まさにその通りだと思います。

「普通ならとっくに死んでるでしょ!」と、思わずスクリーンにツッコミを入れたくなるような絶望的な状況でも、ジェニファーは燃えるような復讐心だけで何度も立ち上がります。特に印象的だったのは、腹部の傷を、熱したビールの缶で焼いて塞ぐあのシーン。その結果、ビールの缶に刻印されていた不死鳥(フェニックス)の柄が、まるでタトゥーのようにジェニファーの腹部に焼き付くんですよね。

この「不死鳥」のモチーフは、まさに「何度でも蘇る」ジェニファー自身を象徴していると同時に、この映画が単なるリアルな復讐劇ではなく、ある種の寓話、あるいはダークファンタジーとして楽しむべきものであることを、観客にそっと教えてくれているようで、私は非常に巧みな演出だと感じました。この、グロテスクなリアリティと、荒唐無稽とも言えるファンタジー要素との絶妙なバランス感覚こそ、コラリー・ファルジャ監督の真骨頂なのかもしれません。

まとめ

さて、コラリー・ファルジャ監督の長編デビュー作『REVENGE リベンジ』、いかがでしたでしょうか。

アカデミー賞を獲った『パラサイト 半地下の家族』などもそうですが、強烈な暴力描写の中にも、社会的なメッセージや人間ドラマが色濃く反映されている作品は、観終わった後に色々と考えさせられますよね。本作も、私にとってはまさにそんな一本でした。

この映画のフェミニズム的な側面については、本当に色々な意見があるようです。「搾取映画の文法にタイムリーな女性的視点を持ち込んだ」と称賛する声もあれば、「結局は男性的なファンタジーの焼き直しなのでは?」といった懐疑的な見方も存在します。確かに、ジェニファーの超人的な変貌ぶりを指して「結局は男性的な強さの模倣では?」といった見方も存在するかもしれません。でも、私自身は、そんな単純な二元論では到底片付けられない、もっと複雑で、それでいて胸のすくようなカタルシスをこの作品から受け取りました。抑圧に対する怒りを、ここまで鮮烈な映像と寓話的な物語で見せ切った監督の手腕は、やはり並大抵のものではないと思います。

何よりも、観る者の五感を刺激し、視覚的に強烈なインパクトを残す作品であることは間違いありません。独特の色彩感覚、スタイリッシュな構図、そして遠慮のないゴア描写。これらは間違いなく好みを選ぶでしょうが、一度その世界観にハマってしまえば、きっと癖になるような抗いがたい魅力があります。

コラリー・ファルジャ監督の新作『サブスタンス』が気になっているけれど、まだ監督の作風に触れたことがないという方には、この長編デビュー作『REVENGE リベンジ』は、その才能の片鱗…いや、むしろ剥き出しの才能をダイレクトに体感する上で、絶対に観てみる価値があると思います!(『サブスタンス』はまだ私も未見ですが、この『リベンジ』を観て、期待はますます高まるばかりです!)

もし『REVENGE リベンジ』に興味を持たれたら、各種配信サービスでご覧になったり、DVDでじっくり鑑賞してみてはいかがでしょうか。

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きっと、あなたの心にも何か熱い爪痕を残す、忘れられない一本になるはずです。ぜひ、週末にでもポップコーン…ではなく、強靭な精神力(?)を準備して、この鮮烈なリベンジ・スリラーに挑んでみてください。

  • IMDb『REVENGE リベンジ』
    キャストやスタッフの詳しい情報、ユーザーからの評価やレビューなどが充実しています。英語サイトですが、作品の撮影秘話やTrivia(トリビア)も多く、さらに深く知りたい方にはおすすめです。
  • この記事を書いた人

HAL8000

映画と猫をこよなく愛するブロガー。 多いときは年間300本以上の映画を観ていて、ジャンル問わず洋画・邦画・アニメ・ドキュメンタリーまで幅広く楽しんでいます。

専門的な批評はできませんが、ゆるっとした感想を気ままに書くスタンス。 ブリティッシュショートヘア×ミヌエットの愛猫ハルも自慢したいポイントで、レビューの合間に猫写真や日常もたまに紹介しています。

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