映画『スーパーマン』(1978) 基本データ
- 原題: Superman
- 監督: リチャード・ドナー
- 主要キャスト:
- クリストファー・リーヴ(クラーク・ケント/スーパーマン)
- マーゴット・キダー(ロイス・レイン)
- ジーン・ハックマン(レックス・ルーサー)
- マーロン・ブランド(ジョー=エル) ほか
- 公開年: 1978年(アメリカ)、1979年(日本)
- 上映時間: 144分
- 主な受賞歴:
- 第51回アカデミー賞 編集賞、作曲賞、音響賞 ノミネート など
- 視聴方法:
- Amazonプライムビデオ など 各種動画配信サービスで配信中
- DVD・Blu-ray 発売中
この記事でわかること
- 新作『スーパーマン』(ジェームズ・ガン監督)公開前に、原点である1978年版を観るべき理由
- なぜ本作が単なるヒーロー映画ではなく、映画史に輝く「金字塔」と称されるのか
- 子供だけでなく大人をも魅了する、徹底した「リアリティ」へのこだわり
- ジョン・ウィリアムズによる、映画音楽史に残るテーマ曲の魅力
- シニカルな時代に「希望」を描いた、製作陣の熱い想いと舞台裏
はじめに
こんにちは。当ブログ『ねことシネマ』へようこそ。
いよいよ今週末の2025年7月11日、ジェームズ・ガン監督による待望の新作『スーパーマン』が公開されますね。『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー』シリーズを手掛け、何を作っても面白い作品に仕上げてくれるガン監督が、新たなDCユニバースの幕開けを飾るということで、期待に胸を膨らませている方も多いのではないでしょうか。
先日発表された映画批評サイト「Rotten Tomatoes」のスコアは、批評家支持率85%、観客支持率95%(2025年7月9日時点)という驚異的な数字。この数字を見るだけで、劇場へ駆けつける決意は固まりますし、「やはりジェームズ・ガンは天才だ…!」と改めて感じさせられます。
そんな新作への期待が最高潮に達する中、ふと私は、すべての原点である1978年公開、リチャード・ドナー監督の『スーパーマン』を観たことがない自分に気づきました。新作を心から楽しむためには、この伝説的な一作に触れておくべきではないか。そう思い立ち、今回初めて鑑賞するに至ったのです。
結論から申し上げますと、それはもう、素晴らしい体験でした。約50年前の作品でありながら、その面白さと完成度の高さに、ただただ圧倒されるばかりでした。
今回の記事では、なぜこの映画が今なお多くの人々に愛され、ヒーロー映画の「金字塔」として語り継がれているのか。新作公開を控えた今だからこそ感じた、その普遍的な魅力について、私なりの感想と、少しだけ調べてみてわかった製作の裏側を交えながら、お話ししていきたいと思います。
あらすじ
物語は、科学技術が高度に発達した惑星クリプトンの崩壊から始まります。高名な科学者ジョー=エルは、星の滅亡を予見し、まだ赤ん坊である一人息子カル=エルを小さな宇宙船に乗せ、遠い地球へと送り出します。
やがて、カンザスののどかな田舎町にたどり着いた宇宙船は、心優しいジョナサンとマーサのケント夫妻に発見されます。二人は赤ん坊を「クラーク・ケント」と名付け、実の子として愛情を込めて育てます。青年へと成長したクラークは、自らが持つ超人的な力に目覚め、その力を人々のために使うことを決意。正義の味方「スーパーマン」として、大都市メトロポリスで活躍を始めます。
しかし、彼の輝かしい存在を快く思わない者もいました。自らを「史上最高の犯罪の天才」と豪語するレックス・ルーサー。彼の恐るべき計画が、スーパーマンと、彼が愛する人々を絶体絶命の危機に陥れることになるのです。
※本作の核心に触れる大きなネタバレはありませんが、物語の展開については言及しています。
作品の魅力
一見すると、王道のヒーロー誕生譚かもしれません。しかし、本作が公開された時代背景や、製作陣が込めた熱い想いを知ると、この映画が持つ真の偉大さが見えてくるように思います。
シニカルな時代に投じられた、一筋の「希望」
この映画が公開された1978年という時代が、本作の価値を特別なものにしていると、私は強く感じました。60年代から70年代初頭にかけてのアメリカは、ベトナム戦争の泥沼や反体制運動のうねりの中で、『俺たちに明日はない』や『イージー・ライダー』に代表される、シニカルでザラついた手触りの「アメリカン・ニューシネマ」が席巻した時代でした。
本作は、そうした時代の空気に対する、力強いアンチテーゼとして生まれたように感じられます。本作について少し調べてみると、当時の製作陣が目指したのは、1960年代のテレビドラマ『バットマン』のような、パロディや意図的な悪趣味(キャンプ)に満ちたコメディタッチの作品だったようです。しかし、監督に就任したリチャード・ドナーは、それを断固として拒否しました。
彼がすべてのスタッフに掲げた指針は、たった一つの言葉でした。
「Verisimilitude(真実らしさ)」
これは、スーパーマンという荒唐無稽な存在を、絶対的な真剣さとリアリティをもって描くという、監督の固い決意表明でした。不信と幻滅が渦巻く時代だからこそ、人々は皮肉ではなく、真の希望を、心から「信じられる」何かを求めているはずだ。監督はそう信じ、大きな賭けに出たのです。この揺るぎない信念こそが、本作を単なる娯楽作ではない、不朽の神話へと昇華させた原動力だったのだと感じます。
大人を唸らせる「真実らしさ」への執念
本作を観ていて驚かされるのは、ファンタジーの塊であるはずのスーパーヒーローの世界に、徹底してリアリティを持たせようとする製作陣の執念です。冒頭のクリプトン星が崩壊するシークエンスは、どこかダークで荘厳なムードが漂い、子供向けのヒーローものとは一線を画す、大人向けの風格を感じさせます。
この「もしかしたら、本当にこんなことが起こるかもしれない」と思わせる説得力は、リチャード・ドナー監督が掲げた「真実らしさ」の賜物でしょう。
そのこだわりは、主人公のキャスティングにも表れています。製作サイドは当初、ロバート・レッドフォードといった大スターを推していましたが、監督は「観客の幻想を壊したくない」と、無名の俳優を起用することにこだわりました。そして見出されたのが、舞台俳優だったクリストファー・リーヴです。
彼の演技は、まさに圧巻の一言。自信に満ち溢れ、高潔なスーパーマンと、どこかおどおどとして不器用なクラーク・ケントを、特殊効果に頼ることなく、姿勢や声のトーン、眼差しだけで完璧に演じ分けています。彼の完璧な演じ分けを前にすれば、「メガネをかけただけなのに、なぜ誰も正体に気づかないんだ?」という長年のツッコミも、「…これは気づかない。気づけるはずがない」と、思わず納得させられてしまう。それほどの説得力が、彼の演技にはありました。
この感覚は、私が個人的にサム・ライミ監督版『スパイダーマン』(一作目)を観た時の感動にとてもよく似ています。ヒーローの誕生を描きながらも、その苦悩や葛藤にリアリティがあり、一本の映画として非常に高い完成度を誇る。そんな手触りの確かさが、この1978年の『スーパーマン』には満ち溢れています。
「あなたは人が空を飛べると信じるだろう」を実現した技術
当時のキャッチコピーは、「You'll believe a man can fly(あなたは人が空を飛べると信じるだろう)」でした。これは、特殊効果チームに対する挑戦状でもあったそうです。
今でこそCGで当たり前のように描かれる飛行シーンですが、当時はそれを実現するための確固たる方法論すらなかったといいます。ワイヤーワークやミニチュア撮影、そして新たに発明された「Zopticシステム」という投影技術などを組み合わせ、試行錯誤の末に、あのリアルでロマンティックな飛行シーンは生み出されました。
安っぽさを全く感じさせないその映像は、約50年後の今観ても、十分に心をときめかせてくれます。技術的な制約の中で、知恵と情熱を結集して不可能を可能にした製作陣の姿は、スーパーマンそのものの英雄的な姿と重なって見えるようでした。
すべてを完成させたジョン・ウィリアムズの音楽
そして、この映画を完成させた最後のピース。それは、ジョン・ウィリアムズの音楽です。
もう説明不要でしょう。あのファンファーレが鳴り響いた瞬間、理屈抜きで鳥肌が立ち、心の底から「スーパーマンが来た!」という全能感が湧き上がってきます。新作『スーパーマン』の予告編でもこのテーマ曲が引用されていることからも、そのメロディがいかに象徴的で、世代を超えて愛されているかがわかります。
映画が音楽に、音楽が映画に、互いを高め合う。すべてのピースが奇跡のように完璧に噛み合った、まさに映画史に残る偉業だと感じずにはいられませんでした。
まとめ
ジェームズ・ガン監督の新作から『スーパーマン』の世界に飛び込むのも、きっと素晴らしい体験になるはずです。しかし、もしお時間に余裕があるのなら、この1978年版をご覧になることを、私は心から強くお勧めします。
今でこそ、「ヒーロー疲れ」なんて言葉も聞かれるほど多くのヒーロー映画が作られていますが、本作が公開された当時は、スーパーヒーローを真剣に、そしてリアルに描くこと自体が革新的な挑戦でした。その挑戦に、最高のスタッフとキャストが見事に応えてみせた、まさに「金字塔」です。
約50年の時を経て、現代の映像技術とジェームズ・ガン監督の解釈で蘇る『スーパーマン』。そして、すべての原点として、揺るぎない希望と誠実さを描ききった1978年の『スーパーマン』。
両者を見比べることで、映像技術の驚くべき進歩や、時代によるヒーロー像の解釈の変化など、より多くの発見と感動が生まれるに違いありません。きっと、ガン監督もこのクラシック作品への深いリスペクトと愛情を、新作の至る所に散りばめていることでしょう。
週末は、この不朽の名作で、ヒーローの原点に触れる時間を過ごしてみてはいかがでしょうか。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。あなたがこの映画のどんなところに魅力を感じるか、ぜひコメントで教えていただけると嬉しいです!
- IMDb『スーパーマン』
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