映画『TASTE テイスト』基本データ
- タイトル:『TASTE テイスト』
- 原題:Vi
- 公開年:2021年(第71回ベルリン国際映画祭出品)
- 監督:レ・バオ
- 出演(登場人物):ナイジェリア出身のサッカー選手バスリーと4人のベトナム人女性 ほか
- 上映時間:97分
- 主な受賞・映画祭出品:
- 第71回ベルリン国際映画祭エンカウンター部門 審査員特別賞
- 視聴方法:JAIHOで配信中(※最新情報は公式サイト等をご確認ください)
この記事でわかること
- ベトナムで上映禁止になった理由と“長尺の全裸シーン”の実態
- 物語というより“映像体験”重視のアート性の高さ
- レ・バオ監督の長回し&定点撮影がもたらす独特の世界観
- ネタバレでは伝わりきらない“映像表現”の醍醐味
- わが家の猫・ハルが見せる“非言語コミュニケーション”との意外な共通点
はじめに
こんにちは。当ブログ「ねことシネマ」にお越しいただきありがとうございます。今回は、ベトナム国内で“長尺の全裸シーン”が問題視され、実質上映禁止になってしまった話題作『TASTE テイスト』をレビューします。ストーリーよりも映像そのものの力で惹きつける“アート系”作品なので、ちょっとマニアックかもしれません。しかし、映画に新しい面白さを求めている人には必見の一本。
わが家の猫・ハルのまったりエピソードも交えつつ、映画の魅力や鑑賞のヒントをお届けします。
あらすじ
ナイジェリアからベトナムのサイゴン(現:ホーチミン)に出稼ぎにやってきたサッカー選手のバスリーは、足を負傷してサッカークラブを解雇されてしまう。彼は国に残してきた9歳の息子を養うため、スラム街で4人の中年のベトナム人女性とほぼ全裸での共同生活をしながら働いている。バスリーは理容室で働き、髪を掃いたり、マッサージ師として働いたりしている。4人の女性は裁縫師と包丁研ぎ、魚の下処理などをして働いている。彼女たちは子豚を飼っており、定期的にお風呂に入れたり、なでたり、抱っこしたり、体重を測ったりしている。バスリーは自分の身の上話を彼女たちに語るが、彼女たちがそれを理解しているのかはわからず、4人はほとんど話さない…。
映画『TASTE テイスト』とは?
レ・バオ監督の長編デビュー作である本作は、2021年の第71回ベルリン国際映画祭エンカウンター部門で審査員特別賞を受賞し、海外の映画祭や批評家から高く評価されました。一方、ベトナム国内では長尺の全裸シーンが問題視され、上映禁止処分を受けるという皮肉な運命に。結果的に多くの人は映画祭や配信サービスを通じてこの“話題作”に触れることになりました。
配信サイトJAIHOで観る魅力
私が本作を観るきっかけになったのは、配信サイト「JAIHO」です。JAIHOは、いわゆる大作映画やメジャー作品だけでなく、世界各国の名作・インディペンデント作品を配信している動画配信サービス。「今日の映画」という特集枠があり、「何を観ようか迷ってる」「ちょっと珍しい映画を観たい」という時にぴったりです。特に『TASTE テイスト』のように国内上映が難しかった作品や、“知る人ぞ知る名作”を配信しているのが嬉しいポイント。ついつい「よし、これは観てみよう!」と冒険したくなるんですよね。
メモ:JAIHOで『TASTE テイスト』が配信中かどうかはタイミングによって変わる場合があります。最新情報は公式サイトでチェックしてみてください。
全裸シーンも!? 独特すぎる映像表現の真髄
いわゆる“ストーリー”らしい展開が薄いぶん、本作の肝となるのは映像表現です。長回し&定点撮影のため、あまりカメラが動きません。その代わり、コンクリートの建物に差し込む光と影のコントラストや、登場人物の立ち姿・生活感が“絵画的”に浮き彫りになるのが印象的でした。
なかでも数十分にわたる全裸シーンは大きな特徴ですが、エロティックというより“原始的”とか“生々しい生活感”といったニュアンスが強いです。男女が浴室で身体を洗ったり、大きな魚を抱きかかえたり……という日常描写が、私個人としては「まるで自然史博物館で絵画を見ているような、不思議な感覚」に捉えられました。妙に神秘的で、ちょっと言葉にしづらいほど独特な空気が漂っています。
作品テーマとしては「家族や居場所の渇望」「社会からの疎外」などが感じられるものの、監督自身はそれらを明確に語りません。映像と沈黙の中にメッセージを潜ませるような作風なので、「正直、はっきりとは理解しにくい」という声も出るかと思います。しかし、その曖昧さこそが『TASTE テイスト』の本質であり、観る人それぞれが自由に意味を膨らませられるのも大きな魅力でしょう。
個人的な感想 :ネタバレだけでは伝わらない映画の醍醐味
私自身、この作品を深く分析できるほどの知見はありません。あえて細かい部分を語らないのはそのためでもありますが、それでも鑑賞後に感じたのは「映画には必ずしも明確なストーリーが必要ではないんだな」ということでした。むしろストーリーらしきものがほとんどなくても、映像と音響だけで成立する表現があって、それこそが映画の醍醐味の一端なのだと改めて気づかされたんです。
実は以前、友人に「パラサイト 半地下の家族」や「ジョーカー」をおすすめしたところ、「友達からネタバレされたからもういい」と返されたことがあるんです。いわゆる“ファスト映画”的な見方ですよね。映画って、映像や音響、その場の雰囲気があってこそ生まれる感情があるはずで、脚本の情報だけで知った気になるのは本来の醍醐味を大きく損ねていると思います。
ましてや『TASTE テイスト』のように、ストーリーがほとんどなく映像表現そのものが勝負どころの作品では、実際に目で追い、音を聞き、空間の空気感を味わうことが不可欠です。私自身、専門知識や批評家レベルの分析力を持っているわけではありませんが、この作品を観て「もっと深く語れる視点があれば、より多面的な解釈ができそうだな」とも感じました。だからこそ今後、こういう映画をじっくり咀嚼できる知識を身につけたいですし、一方で“ネタバレだけで済ませる人”には「ここには映像でしか伝わらない何かがあるんだよ!」と強く言いたいんです。
まとめと猫・ハルの視点?
何もかもが分かりやすいストーリーではないからこそ、観終わった後に「うーん、よく分からないけど心が揺さぶられる…」という余韻が残るのが『TASTE テイスト』の魅力だと思います。レ・バオ監督はこの長編デビュー作で、映像芸術としての映画の可能性を改めて提示してくれました。
わが家の猫・ハルは、私が画面に釘付けになっている間、ずっと隣でうとうとお昼寝を満喫していました。猫目線で見たらどう映るんでしょうか……。いずれにせよ、映画の空気を全身で感じ取るのは人間ならではの楽しみかもしれませんね。

もし興味を持たれた方は、配信サイトJAIHOの「今日の映画」コーナーなどで『TASTE テイスト』を探してみてください。マイナーな名作をはじめ、普段なかなか出会わない作品が見つかるかもしれません。最後までお読みいただきありがとうございました。今後も「ねことシネマ」をよろしくお願いいたします。コメントもお待ちしています。
外部リンク
- IMDb『Vi』
キャストやスタッフの詳しい情報、ユーザーからの評価やレビューなどが充実しています。英語サイトですが、作品の撮影秘話やTrivia(トリビア)も多く、さらに深く知りたい方にはおすすめです。