映画『愛を耕す人』基本データ
- タイトル
『愛を耕す人』 - 原題
Bastarden(英語タイトル:The Promised Land) - 公開年
2025年2月14日(絶賛公開中) - 監督
ニコライ・アーセル(Nikolaj Arcel) - 主演
- マッツ・ミケルセン(Ludvig Kahlen ルドヴィ・ケーレン役)
- アマンダ・コリン(Ann Barbara アン・バーバラ役)
- ほか主要キャスト:シモン・ベンネビヤーグ(フレデリック・デ・シンケル役)など
- 上映時間
127分 - 主な受賞・映画祭出品
- 第80回ヴェネツィア国際映画祭 コンペティション部門出品
- 第96回アカデミー賞国際長編映画賞 デンマーク代表作品に選出
- ヨーロッパ映画賞にて3部門受賞
- Rotten Tomatoes批評家スコア97%(2025年2月22日現在)
- 視聴方法
- 全国劇場で公開中
この記事でわかること
- 18世紀デンマークを舞台にした“開拓”ד家族”の壮大なドラマ
- マッツ・ミケルセンの圧倒的存在感と“渋み”
- 固定カメラと光影が織り成す印象的な映像美
- 日本語タイトル『愛を耕す人』に込められた意味
- 個人的感想&猫エピソード
はじめに
当ブログ「ねことシネマ」にお越しいただき、ありがとうございます。今回は、マッツ・ミケルセン主演のデンマーク映画『愛を耕す人』(原題:Bastarden、英語タイトル:The Promised Land)をご紹介します。第96回アカデミー賞国際長編映画賞のデンマーク代表作品に選ばれただけでなく、ヨーロッパ映画賞でも3部門受賞を果たした話題作です。さらに、2025年2月22日現在、Rotten Tomatoesでも批評家スコア97%という高評価を得ており、マッツ・ミケルセン好きとしては見逃せない1本でした。
あらすじ
18世紀のデンマークで、元軍人のルドヴィ・ケーレンは、一攫千金ならぬ“一躍貴族”を目指して荒れ地を開拓する道を選びます。しかし、その果敢な挑戦にいち早く気づいたのが、地域に絶大な影響力を持つフレデリック・デ・シンケル。地位や領地を脅かされることを恐れ、彼は合法・非合法を問わずあらゆる手段でケーレンを挫こうと画策します。
そんな壮大な自然との闘いの最中、ケーレンはシンケルの屋敷から逃げ出してきた女性アン・バーバラと出会い、さらには家族から見捨てられた少女アンマイ・ムスを引き取ることに。荒涼とした大地で、彼らは支え合いながら新たな人生を築く希望を見いだしていきます。とはいえ、険しい環境とシンケルの執拗な妨害が行く手を阻み、平穏な生活の獲得は簡単ではありません。果たしてケーレンたちは、理不尽な力に押し潰されることなく、自分たちだけの“家族のかたち”を守り抜くことができるのでしょうか。
映画の見どころ
荒野を舞台にしたマッツの“渋み”
本作の大きな魅力のひとつは、主演を務めるマッツ・ミケルセンの存在感です。乾いた大地や強い日差しの中、彼が見せる渋みのある佇まいは、スクリーンに強烈な印象を残します。ストーリーは淡々とした展開ながらも、マッツが醸し出す雰囲気と確かな演技が観客をぐいぐいと惹き込み、飽きさせません。

コントラストが際立つ映像
本作では光と影を強調した映像美が大きなポイントになっています。カメラワークもほとんどが固定ショットに近く、バチッと決められた構図が静かに続いていくのですが、それが逆に荒野の孤独感や厳しさを引き立てているように感じられます。ドルビーシネマなど、高コントラストを活かせる上映環境で観ると、さらに迫力が増しそうです。
「愛を耕す人」という邦題の意味
原題はデンマーク語で「Bastarden」(「私生児」「ロクデナシ」という意味で主人公の出自を表しています)、英語タイトルは「The Promised Land」(約束の地)ですが、日本では『愛を耕す人』と訳されています。文字通り、荒れ地の開拓を通じて作物を育てるだけでなく、そこに集う人々との関係性や絆を“耕す”物語になっているところが、この邦題に込められた狙いでしょう。各キャラクターが抱える事情や、居場所のなさを補うように疑似家族へと発展していく様子は、観る者の心を掴んで離しません。
個人的な感想
没入感を生む“淡々としたドラマ”
ストーリーに大きなひねりや驚きは少ないものの、それが逆に没入感を高めているように思いました。砂埃舞う荒野と固定気味のカメラワーク、その中で繰り広げられる人間ドラマが心地よいテンポで進んでいくんです。役者陣が自然体でありながらも、芯の通った演技を見せてくれるので、退屈さは感じません。
運命や愛の不確実性
途中でケーレンたちが、作物を台無しにしかねない大きな問題に直面するシーンがあります。まさに自然の猛威を見せつけられる瞬間でもあり、「自分がずっと育ててきたものが、いつどうなるかわからない」という不確実性が際立ちます。運命や愛も同じように、どう転がっていくか分からないからこそ尊いのだというメッセージを、静かに示唆しているようでした。
劇場で味わいたい空気感
音楽が少なく、環境音や静かな場面が多いだけに、劇場というシーンに集中しやすい空間で観るのがベストだと感じました。実際、私が鑑賞したときは残念ながら、後ろの席の方がビニール袋をがさがさと鳴らしていて……。こうした雑音が作品の世界に入り込むのを妨げるのは本当にもったいないですよね。マナーを守って、みんなで静寂を共有できると、この映画の味わいはさらに増すはずだと思います。

映画とわが家の猫(ハル)
わが家の猫・ハルは、完全室内飼いのため、外の土に触れることはありません。しかし、家の中に段ボールや紙袋があると、しきりに爪を立てて掘るような動作をするんです。彼女なりに“開拓”や“探検”のつもりなのかもしれません。映画を観た後にそんな姿を見ると、微笑ましくて「猫も本能的に何かを耕しているのかな」なんて思ってしまいました。

まとめ
淡々と進む展開ながらも、マッツ・ミケルセンの魅力がぎゅっと詰まった『愛を耕す人』。荒野の厳しさと人間模様が丁寧に描かれ、自然の中で生きることや愛を育むことの尊さを問いかけてくれます。原題の「Bastarden」や英題「The Promised Land」からは想像しにくいかもしれませんが、邦題の『愛を耕す人』が示すように、“作物”だけでなく“人間関係”や“絆”を深めていく過程こそが、この映画の核心にあるテーマだと感じました。
静けさの中でこそ味わえる“開拓”のドラマが魅力の本作。ぜひ劇場で、その空気感と没入感を存分に味わってみてください。
当ブログ「ねことシネマ」では、これからもハルのエピソードとともにさまざまな映画を紹介していきます。コメントもお待ちしています。それでは、最後までお読みいただきありがとうございました。
外部リンク
- IMDb『Bastarden』
キャストやスタッフの詳しい情報、ユーザーからの評価やレビューなどが充実しています。英語サイトですが、作品の撮影秘話やTrivia(トリビア)も多く、さらに深く知りたい方にはおすすめです。