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【ネタバレなし】ケイト・ウィンスレット主演『リー・ミラー 彼女の瞳が映す世界』徹底レビュー!

映画『リー・ミラー 彼女の瞳が映す世界』基本データ

  • タイトル:『リー・ミラー 彼女の瞳が映す世界』
  • 公開年:2025年5月9日(日本)
  • 監督:エレン・クラス(長編デビュー作)
  • 出演:
    • ケイト・ウィンスレット(リー・ミラー)
    • アンディ・サムバーグ(デイビッド・シャーマン)
    • アンドレア・ライズボロー(オードリー・ウィザース)
    • マリオン・コティヤール(ソランジュ・ダヤン)
    • ジョシュ・オコナー(インタビュアー) ほか
  • 上映時間:116分
  • 主な評価・受賞歴
    • 第82回ゴールデングローブ賞 主演女優賞ノミネート(ケイト・ウィンスレット)
    • 第78回英国アカデミー賞 英国作品賞ノミネート
  • 視聴方法:全国劇場で公開中

この記事でわかること

  • 戦場を駆け抜けた報道写真家・リー・ミラーの基本情報とあらすじ
  • 映画ならではの魅力――演出・脚本の特徴
  • 女性の視点で描く戦争報道の光と影
  • ケイト・ウィンスレットの迫力ある演技と、ほかキャストの見どころ
  • 個人的感想や、関連作品『シビルウォー アメリカ最後の日』とのつながり

はじめに

こんにちは。当ブログ『ねことシネマ』へようこそ。
今回は2025年5月9日に日本公開された伝記映画『リー・ミラー 彼女の瞳が映す世界』をレビューします。同日公開には『パディントン 消えた黄金卿の秘密』もあり、どちらを先に観ようか迷った結果…パディントンを初日に楽しみ、翌日に本作を鑑賞してきました。

きっかけは映画館で見かけたフライヤー。「ヒトラーの浴室に座る女性」という衝撃的なビジュアルを見て、「これって本当にあった写真なの!?」と一気に興味がわいたんです。さらに、ケイト・ウィンスレットがゴールデングローブ賞の主演女優賞にノミネートされ、英国アカデミー賞でも高評価という話題性。これは見逃せないぞ、という期待感もあって劇場へ足を運びました。

観終わった感想は「ややクラシカルな伝記映画の構成だけど、戦場報道写真家としての激動ぶりと、彼女の痛みに寄り添う視点がすごく印象的」。この記事では、そのあらすじから見どころまで、私自身の体験を交えながらお伝えしていきます。


あらすじ

1938年、南フランス。まだ第二次世界大戦の影が忍び寄る前、リー・ミラー(ケイト・ウィンスレット)はアーティスト仲間との自由な時間を謳歌していました。ところがヨーロッパ情勢が深刻さを増すと、彼女はファッション誌「ヴォーグ」や「ライフ」の従軍記者に名乗り出ます。

  • 波乱の戦場報道へ
    「女性に最前線は危険」と言われながらも執念で軍の許可を取り、砲弾が飛び交う戦場へ駆け込むリー。そして、寄り添うようにカメラを回す相棒・デイビッド・シャーマン(アンディ・サムバーグ)の存在。彼らはこれまで男性中心だった戦場報道の現場で、女性の視点からリアルな写真を収めていきます。
  • あの日、ヒトラーの浴室へ
    第二次大戦末期。リーはミュンヘンのヒトラーのアパートへ足を踏み入れ、有名な“ヒトラーの浴室でのセルフポートレート”を撮影するという大胆な行動に出ます。そこには、独裁者のいない空間を自分の存在で“塗り替える”ような強い意志が感じられ、このエピソードは本作の象徴的なクライマックスとなっています。
  • いくつものフラッシュバック
    映画は、老年期のリーがインタビュアーと対話を重ねるシーンを軸に進行。彼女が撮った写真の数々にまつわる回想が、まるで“封印された記憶”を解きほぐすように描かれます。インタビュアーの存在が後半にかけて重要な意味を持ってくるのですが、「一体何者なのか?」という点は本作の見どころのひとつでもあります。
(C)BROUHAHA LEE LIMITED 2023

作品の魅力

女性の視点で描く戦争報道

多くの戦争映画は、兵士や指揮官など男性視点がメインになりがちです。しかし本作では、「戦場で報道写真を撮り続ける女性」の視点がフルに活かされていて新鮮でした。爆音や銃撃の中、男性社会の壁をもかいくぐり、“見過ごされるかもしれない瞬間”を逃さずカメラで切り取るリー。彼女が強制収容所の悲惨な状況や、市井の人々の苦悩までも鮮明に記録する姿に、「女性が見る戦争はこんなにも多層的なのか」と感じさせられます。

ケイト・ウィンスレットの迫力ある演技

ケイト・ウィンスレットは、かつてのモデルとしての華やかさと、従軍報道写真家としての強靭な意志をしっかり両立させています。強い台詞と沈黙の抑制を自在に使い分ける演技はさすがの一言。終盤の収容所シーンでは、彼女の表情だけで“目にしてはいけないものを見てしまった”苦悩や衝撃がビリビリ伝わってきて、画面越しに心が締めつけられました。

真実を“撮る”ことの重み

リーが貫くのは「真実を撮らなければ、世界に何も伝わらない」というジャーナリズム精神。その結果、撮影した写真を発表しようとすると「民衆が不安になるから」と止められる場面も。こうした報道の自由に対する圧力を見ると、現代に通じるテーマでもあり「歴史は繰り返すな…」と痛感させられます。それでも撮り続ける彼女の姿勢に、「写真を撮る行為って、こんなにも恐怖と隣り合わせなんだ」と改めて考えさせられました。

(C)BROUHAHA LEE LIMITED 2023

回想構成とインタビュアーの謎

本作は、老年期のリーがインタビュアーと語り合う回想形式の伝記映画。王道の手法ながら「彼はなぜここまで彼女の過去に踏み込むのか?」という疑問が終盤まで明かされないため、観る側はじわじわと好奇心を刺激されます。大きなどんでん返しではないにしても、この“ちょっとした謎解き”が物語に厚みを与えていて、最後まで集中して観られました。

関連作品『シビルウォー アメリカ最後の日』とのつながり

ところで、昨年日本で公開された『シビルウォー アメリカ最後の日』の主人公リースミス(キルスティン・ダンストが演じた)には、リー・ミラーをモチーフにした要素があると言われています。実際に両作品を見比べてみると、「女性が報道カメラを手に戦場に挑む」という設定や、撮影のビジュアル面、勇敢さと繊細さを併せ持つ主人公像など、どこか共通点を感じる部分が。
私自身、本作を観たあとに『シビルウォー アメリカ最後の日』をもう一度見直したくなりました。

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  • 昨年公開作品の中でも私の中でベスト5に入るほどの傑作です。
  • 配信でも楽しめますが、音響がものをいう作品なので、ぜひBDで迫力あるサウンドを体感してみてください。

同じ戦争映画という枠組みでも、アプローチや背景は異なるので観比べるとより深い発見があるかもしれません。


まとめ

『リー・ミラー 彼女の瞳が映す世界』は、いわゆるド派手な戦争映画とは違い、地味ながらも「女性の視点で戦争を切り取る」という一点に大きな意義を持つ作品でした。モデルから一転して報道写真家になったリー・ミラーの数奇な半生は、それ自体が非常にドラマチック。それをケイト・ウィンスレットの圧倒的な演技力と、丁寧な映像美で描き出した本作は、観終わったあとにじわりと余韻を残します。

  • こんな方におすすめ
    • 女性の目線で描かれる戦争映画に興味がある
    • 報道カメラマンの苦闘や“真実を伝える”ことの意義を考えたい
    • ケイト・ウィンスレットの重厚な演技が観たい
    • 大きなどんでん返しはなくとも、後半の謎解き要素を楽しみたい

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  • 本作の原案ともいえる伝記(原題:『The Lives of Lee Miller』)の日本語訳です。
  • モデルから戦場写真家まで、リーのドラマチックな人生が余すところなく描かれているそうで、映画では触れられなかったエピソード(ニューヨーク時代や戦後の暮らしなど)も知ることができます。
  • 著者はリーの息子アントニー・ペンローズ。写真資料も豊富で、当時の雰囲気がリアルに伝わってくる一冊とのこと。
  • ただ、現在は絶版らしく入手がやや難しい模様。私自身もまだ読めていません...。

劇場に足を運んで、“真実を撮り続ける”という過酷な使命に挑んだリーの苦悩や、その先にある希望を肌で感じてほしいと思います。

  • IMDb『リー・ミラー 彼女の瞳が映す世界』
    キャストやスタッフの詳しい情報、ユーザーからの評価やレビューなどが充実しています。英語サイトですが、作品の撮影秘話やTrivia(トリビア)も多く、さらに深く知りたい方にはおすすめです。
  • この記事を書いた人

HAL8000

映画と猫をこよなく愛するブロガー。 多いときは年間300本以上の映画を観ていて、ジャンル問わず洋画・邦画・アニメ・ドキュメンタリーまで幅広く楽しんでいます。

専門的な批評はできませんが、ゆるっとした感想を気ままに書くスタンス。 ブリティッシュショートヘア×ミヌエットの愛猫ハルも自慢したいポイントで、レビューの合間に猫写真や日常もたまに紹介しています。

当ブログ「ねことシネマ」で、映画好き&猫好きの皆さんに楽しんでいただけると嬉しいです。
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