映画『HELP/復讐島』基本データ
- 原題:Send Help
- 公開年:2026年
- 監督:サム・ライミ
- 脚本:ダミアン・シャノン/マーク・スウィフト
- 主要キャスト:
- レイチェル・マクアダムス(リンダ)
- ディラン・オブライエン(ブラッドリー) ほか
- 上映時間:115分
- 撮影:ビル・ポープ
- 音楽:ダニー・エルフマン
- 編集:ボブ・ムラウスキー
- 配給:20世紀スタジオ
- 視聴方法:
- 劇場公開中(2026年1月30日)
この記事でわかること
- 『HELP/復讐島』が「予告の印象」とは違って刺さった理由
- 無人島サバイバル×復讐劇が、どこでホラーに変質するのか
- サム・ライミらしい“笑っていいのか怖がるべきか”の気持ちよさ
- レイチェル・マクアダムス&ディラン・オブライエンの振れ幅の面白さ
- グロ耐性がない人が知っておきたい注意点(やさしめに解説します)
はじめに
こんにちは。当ブログ『ねことシネマ』へようこそ。
今回は『HELP/復讐島』のレビューです。
正直に言うと、私はこの映画、観る気がほぼゼロでした。劇場で流れる日本版予告が、どうにもB級っぽく見えてしまって。「パワハラクソ上司と無人島で復讐」って設定は強いのに、軽いノリのコメディに寄せた雰囲気が先に立ってしまったんです。
ところが監督名を見て、心が止まりました。サム・ライミ。
ホラーの伝説級を叩き出した死霊のはらわたの人であり、トビー・マグワイア版のスパイダーマンで“王道エンタメの型”も作ってしまった人。そして近年だとドクター・ストレンジ/マルチバース・オブ・マッドネスで、MCUの巨大な枠の中でも作家性を出してきた人です。
さらに、公開直後からRotten Tomatoesで高い支持が目に入ってきて、「え、あの予告で?」と逆に気になってしまいました。結果として――めちゃくちゃ良かったです。予告だけで判断しなくて本当によかった、の一言でした。
※本文は“軽いネタバレ”を含みます。終盤の核心はぼかしますが、未見の方はご注意ください。
あらすじ
会社員のリンダは、パワハラ気質の上司ブラッドリーのもとで、息の詰まる日々を送っています。実務能力はあるのに、上からは「使い捨ての駒」扱い。いちばん悔しいのは、能力ではなく“空気”や“好み”で評価が決まってしまうこと。
ある出張の日、飛行機事故が起き、リンダとブラッドリーは二人きりで孤島に漂着してしまいます。文明のルールが剥がれ落ち、ここから世界は「会社」ではなく「自然」に支配される場所へ。
怪我で動けないブラッドリー。サバイバルの段取りを組めるリンダ。
当然のように、力関係は逆転していきます。ところが、それでスカッと終わる映画ではありません。二人の距離が近づいたように見える瞬間ほど、妙に背筋が寒くなる――そんな種類の物語です。

作品の魅力
逆転のカタルシスが、いつの間にか“恐怖”に変わる
『HELP/復讐島』のいちばん気持ちいいところは、序盤の逆転劇です。
オフィスでは絶対に逆らえなかった上司が、島では無力になる。そこでリンダが、火を起こし、水を確保し、食料を探し、生活を“回す”。この手際の良さが、見ていて素直に痛快です。「ほら見たことか」と言いたくなるやつです。
でもライミは、そこで止めてくれません。
リンダの行動が「生きるため」から「支配するため」へ、じわっと色を変え始める瞬間があるんです。観客の拍手が、そのまま喉に詰まる感じ。
ここが本作のいやらしい(褒めてます)ところで、私たちは前半、「やったれ!」と気持ちよくなりながら、いつの間にか“共犯”にされていきます。
“助けは来ない”が、会社員ホラーとして刺さる
本作は無人島サバイバルですが、感触としては「会社員ホラー」でもあります。
オフィスでは、役に立つ人ほど雑に扱われ、縁故や愛嬌が幅を利かせる。そこで積もった怒りって、綺麗ごとだけでは片づきません。むしろ「言葉にできないドス黒さ」として蓄積していく。
島は、その蓋を剥がす装置になっています。
文明から切り離されることで、人は“心が裸”になります。いい面も悪い面も、言い訳が効かない形で露出する。
リンダが“原始生活における役割”を一手に担っていく姿は、単なる逆転劇を超えて、価値観そのものを揺さぶってきました。強いのは筋力じゃなく、状況を読む知恵と段取り。そのあたりが、現代的で、嫌にリアルです。
そして、この映画が怖いのは、「助けが来ない」ことそのものよりも、“助けが来ない世界に適応してしまう自分”が映るところだと思いました。
制度も組織も信用できないなら、自分で奪うしかない――その危険な正しさを、エンタメとして飲ませてくる感覚があります。
笑っていいのか分からない、ライミ印の“スプラットスティック”
ライミ作品って、恐怖と笑いが同じフレームに入ってきます。
本作もまさにそれで、痛い・汚い・怖いのに、なぜか笑いが漏れてしまう場面がある。しかも、その笑いが「人としてどうなんだ」と自分に跳ね返ってくる。
飛行機事故のくだりで、すでに「来たな」と思わせる怖さがあり、島に入ってからは血の匂いが増していきます。特に中盤以降、グロ描写はしっかりあります。苦手な方は覚悟した方がいいです。
ただ、ただ残酷なだけではなく、どこか漫画的なテンポとカメラの意地悪さがあって、アトラクションに乗せられている感覚もあります。ここはまさに、スペル系の“気まずい楽しさ”に近い気がしました。
二人芝居の振れ幅がとにかく良い
本作は、基本的に二人の関係で引っ張っていきます。だからこそ、役者の振れ幅が効きます。
レイチェル・マクアダムスは、私の中ではアバウト・タイムの印象が強かったのですが、今回はまったく別の顔でした。最初は背中を丸めていた人が、少しずつ目の奥の温度が変わっていく。怖いのに目が離せない。
ディラン・オブライエンもすごいです。
序盤の「嫌な上司」感はちゃんと憎たらしいのに、島では情けなさが出て、そこから少しだけ人間味が見える瞬間もある。観客の感情を、嫌悪→同情→呆れ→恐怖へと揺らしてくる。
この“揺さぶり”があるから、最後まで着地が読めません。
小道具が刺す皮肉が、あとからじわじわ効く
この映画、意地悪なほど“象徴”を置いていきます。
オフィスでの価値観(その場のノリ、男社会、見栄、肩書き)が、島では何の役にも立たない。逆に、かつて馬鹿にされていたものが武器になる。
細かいところですが、こういう“社会の縮図”の置き方が上手いので、見終わったあとに思い返す楽しさがあります。
同じ無人島ものでも、キャスト・アウェイみたいな「孤独と再生」とは別の方向。人間関係そのものが“獲物と捕食者”みたいに変質していく怖さがあります。
また、閉鎖空間での歪んだ依存関係という意味ではミザリーを思い出す方もいるかもしれませんし、階級の反転というテーマでは逆転のトライアングル的な風味もあります。ただ本作は、それらをもっと血とブラックユーモアで煮詰めて、最後にホラーとして落とすのが強烈でした。
まとめ
『HELP/復讐島』は、予告の印象だけで「軽い復讐コメディかな」と思っていた自分を、いい意味で裏切ってくれました。
逆転劇の快感を用意しつつ、それをそのまま“正義の勝利”として終わらせない。観客が気持ちよくなったタイミングで、「それ、本当に気持ちいい?」と突きつけてくる。だからこそ、見終わったあとに残ります。
ただし、これははっきり注意点です。グロ描写はそれなりにあります。
「スカッと復讐だけ」を期待して行くと、終盤で置いていかれるかもしれません。逆に、ライミの“笑っていいのか分からないホラー”が好きな方には、かなり刺さると思います。
もし観られた方がいたら、ぜひ教えてください。
- あなたは、どの時点で「怖いのは誰だ?」と感じましたか?
- ラストの余韻を、希望と感じましたか、それとも別の恐怖と感じましたか?
週末は、この映画で少しだけスリルのある時間を過ごしてみてはいかがでしょうか。きっと“自分の中の感情”について、新しい発見があるはずです。
- IMDb『HELP 復讐島』
キャストやスタッフの詳しい情報、ユーザーからの評価やレビューなどが充実しています。英語サイトですが、作品の撮影秘話やTrivia(トリビア)も多く、さらに深く知りたい方にはおすすめです。