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【ネタバレなし】母と娘を揺さぶる“死の鳥”──A24が贈る『終わりの鳥』の驚きと希望

映画『終わりの鳥』基本データ

  • タイトル:『終わりの鳥』
  • 公開年:2024年(英国)、2025(日本)
  • 監督:ダイナ・O・プスィッチ
  • 出演
    • ジュリア・ルイス=ドレイファス(ゾラ)
    • ローラ・ペティクルー(チューズデー) など
  • 上映時間:110分
  • 視聴方法
    • 全国劇場で公開中

この記事でわかること

  • 不思議な「死の鳥」が登場するファンタジー&ホラー要素を持つ作品概要
  • “母と娘”それぞれの視点から見た「死の受容」のドラマ
  • ネタバレ厳禁な“第2幕”の衝撃展開が生む意外性
  • 監督やキャストが作り上げる魅力的な世界観と伏線回収の巧みさ

はじめに

こんにちは。当ブログ『ねことシネマ』へようこそ。今回は、ダイナ・O・プスィッチ監督の長編デビュー作『終わりの鳥』をレビューいたします。監督自ら脚本も手がけたというファンタジー・ドラマです。

「余命わずかな少女と、その子どもを心から愛する母。そこに“死”を告げる大きなオウムがやってくる」という、なんとも奇妙でシュールな設定が特徴的。ですが、観終わると不思議と胸に温かな感情が宿り、どこか“生きる”ことへの思いが強くなる作品でもあります。

実は私自身、あまり前情報を仕入れずに「予告だけ見て面白そうだったから」という軽い気持ちで劇場へ足を運んだのですが、その奇想天外な世界観と丁寧な伏線回収にすっかり引き込まれてしまいました。さらに後半には「ここで終わりかな?」と思いきや、意外な展開がもうひと押しあって、気づけばエンドロールまで目が離せない状態に。今回はそんな『終わりの鳥』の魅力を、ライトな視点でお届けしたいと思います。


あらすじ

15歳の少女・チューズデー(ローラ・ペティクルー)は原因不明の病に侵され、「余命わずか」という厳しい宣告を受けています。しかし当のチューズデー本人は、不安を抱えながらもどこか達観した様子。彼女の母・ゾラ(ジュリア・ルイス=ドレイファス)は娘を心底愛しながらも、現実を直視できずに苦しんでいました。

そんなある日、チューズデーの前に、大きなオウムのような姿をした謎の鳥<デス>(声:アリンゼ・ケニ)が舞い降りてきます。彼は「生き物の終わりを告げる鳥」であり、本来ならチューズデーの魂を狩り取る存在。そのはずが、チューズデーは持ち前のユーモアで<デス>を笑わせ、母が戻るまで死の宣告を先延ばしすることに成功するのです。

やがて家に戻ってきた母・ゾラは、「死」の象徴である鳥を目にして愕然。娘を奪われる恐怖から「なんとしても<デス>を追い払わなくては」と暴走気味の行動に出始めます。

最初はコミカルなやりとりも多いのですが、物語は中盤以降、予想を大きく裏切る意外な方向へ舵を切っていくことに――。

(C)DEATH ON A TUESDAYLLC/THE BRITISH FILM INSTITUTE/BRITISH BROADCASTING CORPORATION 2024

作品の魅力

ファンタジーとホラーの絶妙な融合

最初はコミカルな雰囲気に油断していたんですが、母ゾラが鳥(デス)を必死に拒絶しはじめるあたりから、空気が一変。『あれ? これってホラーだったの?』と思うほど不気味さが増していくんです。意表を突く展開が続くので、気づいたら息をのんで観ていました。

  • 序盤:アイス・キューブの曲をバックに鳥がリズムを刻むコミカルなシーンもあり、ちょっとした児童書のような微笑ましさ。
  • 中盤以降:母ゾラが鳥(デス)に対し激しい拒絶反応を示したり、世界各地で異変が起こったりと、急に不気味な空気が漂い始める。

このミックス感こそが『終わりの鳥』の醍醐味であり、観客を「次はどんな展開が来るの?」と期待させる原動力となっています。

ネタバレ厳禁! “第2幕”でガラリと変わるストーリー

本作の見どころの一つが、中盤にあたる“第2幕”の意外性です。ここは観てのお楽しみなので詳細には触れませんが、観客の多くが一息ついたタイミングで、さらに一段階大きく転調します。

  • 伏線の巧みな回収
    • 第1幕の「なんだかよくわからない」やり取りや描写が、第2幕で次々と意味を帯びてくる。
    • 母と娘、そして鳥(デス)のやりとりで散りばめられた小ネタが、終盤にかけてつながる快感がある。
  • 「終わった」と思った後にもうひと押し
    • 物語上で「ここでクライマックスだろう」と思う一幕があるが、その先にエピローグ的な展開があり、テーマを裏返して見せる仕掛け。

実際に私も、「あ、ここで終わるのかな? いい作品だった!」と思った直後に、さらに続く展開に驚かされました。その第2幕~エピローグ部分があるからこそ、“ただの死別ファンタジー”で終わらない奥行きが生まれているように感じます。

希望へとつながるラスト──「死だけではない」メッセージ

タイトルは『終わりの鳥』ですが、最終的には「本当にこの鳥は終わりだけを運んでくるのか?」という問いが浮かんできます。エピローグでは“生”や“再生”という正反対のテーマに踏み込んでいるからです。

  • 最後に再び流れる「It Was a Good Day」
    • 冒頭でコミカルに使われた曲が、今度は全く違う感触で流れてくる。
    • 同じ楽曲でも、物語を通して印象が変わる面白い演出。
  • 「死」を正面から扱いながら、観終わったあと暗い気分だけが残るわけではない
    • 希望や温かさを感じさせる終わり方で、「生きる」とは何かを考えさせる。

娘チューズデーが示す“ある受容のしかた”と、母ゾラが抱える“激しい拒絶”。この両極端な感情を通して、死を受け入れるという行為は“今まさに生きている瞬間をいかに大切にできるか”と地続きであることを、映画は静かに語りかけてきます。

(C)DEATH ON A TUESDAYLLC/THE BRITISH FILM INSTITUTE/BRITISH BROADCASTING CORPORATION 2024

A24らしさ満載の映像と音響

A24らしさが全開なのも見どころのひとつ。死の象徴として現れる鳥の姿はVFXを駆使しつつ、現実と幻想の境界をギリギリまで曖昧にする演出がなされています。スクリーンを通しても、その不気味さが肌で感じられるほどです。

  • <デス>が突然巨大化したり手のひらサイズに縮んだりする演出
    • ファンタジックながらも荒唐無稽にならず、むしろホラー的な怖さをかもし出す。
  • 音楽の大胆な使い方
    • アイス・キューブの「It Was a Good Day」を死神が愛唱するとは誰が想像したでしょう?
    • スコア全体もポップスと現代音楽が交錯していて、感情を激しく揺さぶる。

まとめ

ホラーなのに不思議と温かい。ファンタジーかと思いきや、心がえぐられるようなリアルさもある。そんな相反する要素が絶妙に組み合わさっているのが『終わりの鳥』の魅力だと感じました。
終盤は“死”を見つめながら、同時に“生”の大切さを鮮明に描いてくれるので、観終わった後は不思議な充足感に包まれます。

当ブログ『ねことシネマ』としては、「ちょっと不思議な映画を観たい」「ホラーは苦手だけれど興味がある」「A24作品が好き」という方にぜひおすすめしたい一本です。

ぜひ劇場に足を運んで、“死”を運ぶ鳥が問いかける「本当に大切なこと」を味わってみてください。きっと、「観てよかった」と思えるはずです。もしご覧になった際は、コメント欄で感想を教えていただけると嬉しいです。

  • IMDb『終わりの鳥』
    キャストやスタッフの詳しい情報、ユーザーからの評価やレビューなどが充実しています。英語サイトですが、作品の撮影秘話やTrivia(トリビア)も多く、さらに深く知りたい方にはおすすめです。
  • この記事を書いた人

HAL8000

映画と猫をこよなく愛するブロガー。 多いときは年間300本以上の映画を観ていて、ジャンル問わず洋画・邦画・アニメ・ドキュメンタリーまで幅広く楽しんでいます。

専門的な批評はできませんが、ゆるっとした感想を気ままに書くスタンス。 ブリティッシュショートヘア×ミヌエットの愛猫ハルも自慢したいポイントで、レビューの合間に猫写真や日常もたまに紹介しています。

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