映画『片思い世界』基本データ
- タイトル:『片思い世界』
- 公開年:2025年
- 監督:土井裕泰
- 出演:
- 広瀬すず(相良美咲)
- 杉咲花(片石優花)
- 清原果耶(阿澄さくら)
- 横浜流星(高杉典真) など
- 上映時間:126分
- 視聴方法:
- 全国劇場にて公開中
この記事でわかること
- 『片思い世界』のあらすじと、事前に言える範囲の設定
- セリフや伏線が生み出す“ネタバレ注意”の展開
- 広瀬すず・杉咲花・清原果耶のトリプル主演がもたらす魅力
- 土井裕泰監督×坂元裕二脚本タッグによる新たな挑戦
- ネタバレなしで観るおすすめポイントと、観る人を選ぶかもしれない理由
はじめに
こんにちは。当ブログ『ねことシネマ』へようこそ。今回は、土井裕泰監督と坂元裕二脚本のコンビが再びタッグを組んで話題沸騰中の新作、『片思い世界』をご紹介します。前作『花束みたいな恋をした』での抜群のコンビネーションが記憶に新しいだけに、今作に対しても「あの2人が組むなら面白いはず」と、私自身かなり胸を膨らませていました。
実を言うと、私も「この二人なら外れはないでしょ」という気持ちで劇場へ足を運びました。ただし、本作は「ネタバレ厳禁」と言われるほど、冒頭から大きな仕掛けがあるため、レビューでどこまでお話ししていいものか迷う作品でもあります。そこで今回は、私が実際に観た感想を正直に交えつつ、できるだけネタバレを控えながらライトにレビューしていきますね。
もし「まだ観ていないから、なるべく何も知りたくない!」という方は、あらすじの時点で若干の情報が含まれるので少しご注意を。それでも、なるべく“安全運転”で書いていきますので、ぜひ最後までお付き合いください。
あらすじ
舞台は東京の片隅にある古びた一軒家。この家に住むのは、美咲(広瀬すず)、優花(杉咲花)、さくら(清原果耶)の3人の女性です。家族でも姉妹でも同級生でもない彼女たちが、なぜか12年という長い年月を同じ屋根の下で暮らしている――そんな不思議な状況から物語は始まります。
普段は仕事や通学、バイトなどをこなし、夜には一緒に晩ごはんを食べて、そのまま同じ寝室で眠る。美咲はバスで見かける誰かのことが気になるようですが、優花とさくらもそれを知ってか知らずか、そっと見守っている様子です。彼女たちの胸には、それぞれ「もう少しで届きそうだけど、なかなか届かない」秘めた想いが潜んでいるらしく……。
けれど、「3人の絆の理由」や「強く結ばれているきっかけ」は本作の大きな核心部分。そこには、映画のジャンルさえ変貌するほどの衝撃が待ち構えています。
ネタバレ注意
実は冒頭から数十分で「こんなに世界観が変わっちゃうの!?」とビックリする仕掛けがあるんです。だからこそ、まだ観ていない方にはあえて前情報を入れずに劇場に行ってみるのがおすすめ。ワクワクしながら、作品がガラッと変化する瞬間をぜひ体感してほしいですね。

作品の魅力
坂元裕二の脚本スタイル――今回は“セリフ回し”が抑えめ?
今回の『片思い世界』は、土井裕泰監督と坂元裕二脚本の再タッグということで期待値が高まっていました。坂元裕二といえば、『花束みたいな恋をした』や『ファーストキス』などで印象的なセリフの応酬が目立っていましたが、本作では“言葉で畳みかける”ようなスタイルが少し控えめに。とはいえ、何気ない会話や動作に伏線を潜ませ、中盤以降「あれも伏線だったのか!」と驚かされる構成はやはり健在です。一度最後まで観たあとに冒頭へ戻ってみると、同じシーンがまったく別の意味を持つ――そんなリピート鑑賞の楽しみが満載だと感じました。
私自身が「評価が難しい」と感じた理由
ただ、私個人の率直な印象を言うと、「物語の核心が予想以上に当初イメージとかけ離れていた」ため、素直に評価するのが難しいと感じました。たとえば“仲良く暮らす3人の女性を描くハートフル系”という先入観を持っていたとしたら、途中で大きく覆される展開に面食らうかもしれません。驚きと面白さを同時に味わう一方、「これって自分が思っていた方向性とはちょっと違うかも…」と戸惑う場面もありました。
もちろん、そうした意外性や伏線回収の巧妙さを「素晴らしい!」と大絶賛する方もいるでしょう。一方、「なんだかしっくりこない」と感じる人もいそうです。決して「作品自体の完成度が低い」というわけではなく、私にとっては“誰にでも推しやすい良作!”と断言するには少しハードルがある――そんな複雑な余韻が残った一作でした。
土井裕泰監督の繊細演出×ファンタジー的要素
土井裕泰監督は、『いま、会いにゆきます』や『花束みたいな恋をした』などで繊細かつ温かみのある映像表現に定評があります。今回も、柔らかな光やパステル調のインテリアなどが印象的で、どこか穏やかな空気感が漂うんですね。
ところが『片思い世界』では、中盤以降にファンタジーやSF的要素を思わせる大胆な仕掛けが登場し、いきなり別作品を観ているようなギャップを体感する瞬間があります。こうした「日常のリアル」×「非現実的な展開」の融合はとても難しく、下手をすると観客が話から弾き飛ばされてしまいかねません。しかし、土井監督ならではの静かで丁寧なカメラワークが、観る側をそっと作品世界に留めてくれている印象を受けました。
トリプル主演の絶妙なアンサンブル
広瀬すず、杉咲花、清原果耶という若手実力派女優がそろう画面は、まるで本物の姉妹や幼馴染がそこにいるような自然な雰囲気があります。12年間も一緒に暮らしているという設定だけに、ただ“仲が良い”だけでは足りない深みが必要ですが、3人の表情や佇まいからは、そうした説得力がしっかり伝わってきました。
特にクライマックス付近では、広瀬すずの涙や杉咲花の繊細な所作、清原果耶の微妙な表情変化が視線を引きつけて離しません。さらに横浜流星をはじめとする助演陣が、“表向きは恋愛映画っぽさ”を漂わせつつ、本作の意外な切り口を支える役割を果たしているのも見どころです。彼らの演技が積み重なることで、作品全体に奥行きが増している印象を受けました。

“声にならない想い”を象徴する合唱曲「声は風」
劇中で印象的に使われる合唱曲「声は風」は、脚本の坂元裕二が作詞したオリジナル曲で、本作のストーリーを象徴するアイテムでもあります。クライマックスではこの曲が要となり、私も含めて多くの観客が涙を止められなくなるシーンがあるはず。
正直言えば、「ここで泣かせにくるのね」というあざとさを感じなくはありませんが、それでもグッとくるインパクトがあるのも事実。「これ、卒業ソングの新定番になりうるかも?」と思うほど耳に残るメロディと歌詞なので、気になる方はぜひ映画館で確かめてみてください。
まとめ
『片思い世界』は、冒頭の和やかな空気からは想像できない衝撃的な展開が待ち受けており、そこから映画のジャンルがガラリと変わるような面白さがあります。『花束みたいな恋をした』の延長線を期待して観ると、良くも悪くも裏切られる可能性が高いかもしれません。
ちなみに私は、観賞前に岩井俊二監督の『ラブレター』(4Kリマスター版)を観て感動に浸っていたこともあり、うまく気持ちを切り替えられなかった部分がありました。「そういうタイミングって大事だな」と改めて感じたほどです。決して「悪い映画」だとは思わないのですが、先入観の方向性が違うと少し戸惑ってしまうかもしれません。
とはいえ、SNSやレビューサイトでは「想像と全然違って感動した」「3人の女優の演技が最高」という声もたくさん見かけます。私のように迷う人もいれば、大絶賛する人もいる――まさにそれが『片思い世界』の醍醐味でしょう。
みなさんはどうでしょう? もし興味をお持ちなら、なるべく前情報なしで劇場へ行ってみてください。この映画は“こういう物語です”と一方的に押しつけるのでなく、観客の想像力や解釈を引き出す仕掛けで満ちています。 まるで作品に“片思い”しているかのように、あれこれ考えを巡らせたくなる――そんな余白が随所に散りばめられているのです。気に入れば、リピート鑑賞でさらなる発見もあるかもしれません。どうかあなた自身の目で、この不思議な世界の真相を確かめてみてくださいね。