映画

【ネタバレなし】高速セリフと友情の行方――『ソーシャル・ネットワーク』の魅力を深掘り!

映画『ソーシャル・ネットワーク』基本データ

  • タイトル:『ソーシャル・ネットワーク』
  • 公開年:2010年(米国)、2011年(日本)
  • 監督:デヴィッド・フィンチャー
  • 出演:
    • ジェシー・アイゼンバーグ(マーク・ザッカーバーグ役)
    • アンドリュー・ガーフィールド(エドゥアルド・サベリン役)
    • ジャスティン・ティンバーレイク(ショーン・パーカー役) など
  • 上映時間:120分
  • 主な受賞・映画祭出品
    • 第83回アカデミー賞(2011年)で8部門ノミネート 脚色賞・編集賞・作曲賞を受賞 など
  • 視聴方法
    • 各種配信サイトで配信中、BD・DVD発売中

この記事でわかること

  • 映画『ソーシャル・ネットワーク』のあらすじと魅力
  • 訴訟をめぐる非線形構成の巧みさ
  • デヴィッド・フィンチャー監督らしい緻密な演出と撮影のこだわり
  • 友情と野心の光と影を描いた普遍的テーマ
  • 筆者の個人的な感想と余韻

はじめに

こんにちは、『ねことシネマ』へようこそ。今回はデヴィッド・フィンチャー監督の『ソーシャル・ネットワーク』(2010年)について書いてみます。U-NEXTで見かけて久しぶりに観たら、やっぱり面白かったんですよね。

初めて観たときは、映画の話題性もあって興味本位で手に取っただけだったのですが、いざ再鑑賞してみると「派手さこそないものの、静かに心を掴んで離さない質の高い作品だな」という印象がより一層強まりました。セリフのテンポ感や脚本の巧みさ、そして友情や野心をめぐるドラマがじわじわと響いてきて、観終わったあとにも余韻が続くんですよね。

さまざまな視点からFacebook創業のドラマを描く本作、気になっている方はぜひ最後までご覧ください。この記事では、映画の魅力や見どころ、そして私自身が再鑑賞して気づいたポイントをわかりやすくご紹介していきます。

あらすじ

舞台は2003年のハーバード大学。プログラミングに長けた学生、マーク・ザッカーバーグが、同級生のエドゥアルド・サベリンらとともに立ち上げたウェブサービスが、後に世界規模のSNS「Facebook」へと発展していく――というのが大筋です。
しかし物語は単なるサクセスストーリーには留まりません。劇中では、マークが関与する二つの訴訟(ウィンクルボス兄弟からの訴えと、エドゥアルドとの決裂)が同時進行し、現在(証言シーン)と過去(大学時代の回想)を行き来する構成をとっています。見方を変えれば、本作は「友情と野心」の光と影を、複数の視点から浮き彫りにする人間ドラマとも言えます。

© 2010 Sony Pictures Digital Inc. All Rights Reserved.

作品の魅力:非線形構成とセリフのスピード感

訴訟シーンを“額縁”にした物語づくり

『ソーシャル・ネットワーク』の大きな特徴は、現在の訴訟シーンを“フレーム(額縁)”にして、過去の回想が交錯する構造にあります。クリストファー・ノーラン監督の『オッペンハイマー』を観た方なら、複数の時系列が交互に描かれているあの手法をイメージすると分かりやすいかもしれません。実際には本作(2010年)の方が先に似た構成を取り入れていて、論点が飛びすぎないよう巧みにセリフや編集が配されているため、不思議と混乱はありません。最後までストレスなく観られるのも、脚本のアーロン・ソーキンの手腕ゆえでしょう。

冒頭から引き込む高速セリフ

デヴィッド・フィンチャー監督は精密な演出で有名ですが、本作の冒頭に登場するバーでの口論シーンは有名なエピソードがあります。なんと99テイクも撮影したそうで、瞬時の表情変化や間合いを追求し続ける狂気のようなこだわりが伺えます。セリフも異様に早く、思わず「え、何て言った?」とリピートしたくなるほど。編集のテンポ感も相まって、最初から一気に物語世界へ引き込まれてしまうのがフィンチャーらしい魅力です。


撮影と演技が生む“静かな熱量”

デジタル撮影×緻密な構図

本作では手持ち撮影を抑え、画面全体がどこか暗めのコントラストで統一されています。ハーバード大学の夜の景色や薄暗い部屋の中を、シャープかつ落ち着いた映像美で描くのが印象的でした。派手な動きこそ少ないものの、カット割りのタイミングでテンポを生み出し、自然と集中力を途切れさせない。フィンチャー作品の持ち味が存分に発揮されています。

心の奥に残る俳優の演技

主演のジェシー・アイゼンバーグは、やや社交下手な天才肌を繊細に体現。相棒役であるアンドリュー・ガーフィールドは友情に厚く、しかし裏切られた後の怒りと悲しみを感情豊かに表現しており、マークとの対立シーンは非常に胸に迫ります。またショーン・パーカー役のジャスティン・ティンバーレイクは、実在の起業家の“派手好きで狡猾”な一面をエネルギッシュに演じ、物語に緊張感をもたらすキーパーソンとして強烈な印象を残します。


“友情と野心”という普遍的テーマ

世界的大成功を収めたSNSの創業物語でありながら、本作の焦点は人間関係のほころびにこそあります。訴訟を通じて、親友同士だったマークとエドゥアルドが対立し、法廷の場で敵対するに至る展開はとても痛ましい。その一方で、天才的なアイデアを形にし、大胆に世界を変えていく起業家の“狂気的なまでの野心”には惹きつけられるものもあり、「社会を揺るがすほどのイノベーションは、こうした摩擦を伴うのかも…」と思わせます。
これは以前、当ブログでも取り上げた『セッション』や『ラ・ラ・ランド』など、“大きな夢を実現するための狂気”にも通じるテーマです。成功の裏にある孤独や友情の破綻は、時代や業界を超えて普遍的なものなのかもしれません。

© 2010 Sony Pictures Digital Inc. All Rights Reserved.

実話との相違点と現在への示唆

本作は実在の人物を題材としながら、いくつか脚色が加えられています。たとえば「恋人に振られた腹いせに女子学生を品評するサイトを作った」という描写など、本人の証言によると事実とは異なるようです。とはいえ、創作を交えながら描かれる“友情と裏切り”、“栄光と孤独”の対比は、観る者に「成功とは何か」「本当の幸福とは何か」という深い問いを投げかけます。
Facebookが身近な存在になった今こそ、映画のラストシーンで孤独にリロードボタンを押し続けるマークの姿が、現代的なSNS社会のアイロニーをより強く感じさせるように思います。


まとめ:静かに残る余韻を楽しむ一本

改めて振り返ると、『ソーシャル・ネットワーク』は観賞後に「衝撃的で震えた!」というより、心の片隅にゆっくりと問いを残すタイプの映画といえるでしょう。テンポのいいセリフや精密な演出、キャストの繊細な演技にグイグイ引っ張られて、気づけばラストまで一気に観てしまう。そんな“魔力”を持った映画だと改めて感じます。
二度、三度と観ても、「やはり上質な一本だ」としみじみ感じる。強烈なインパクトで胸を突き刺すのではなく、観賞後の余韻の中で「成功と倫理は両立できるのか」「友情を犠牲にしてまで得たものは本当に幸せなのか」といった問いがふと頭をよぎる――そんな、静かで長く残る後味が魅力です。

まだ観ていない方はもちろん、しばらく鑑賞していないという方も、今一度本作に触れてはいかがでしょうか。もしかすると、SNSとの付き合い方や人間関係の奥深さに、今まで気づかなかった一面を感じられるかもしれません。

最後までお読みいただき、ありがとうございます。当ブログ『ねことシネマ』では、映画レビューや猫との日常をゆるりとお届けしています。もし『ソーシャル・ネットワーク』に対して思うところがありましたら、ぜひコメントなどでお聞かせください。みなさんの感想や解釈を共有できると嬉しいです。次回のレビューでも、またお会いしましょう!


当ブログ的“猫視点”のひと言

再鑑賞しているあいだ、うちの猫ハルはずーっと爆睡状態。どうやら早口のセリフより、魚やネズミが出てくるアニメのほうが好みみたいです。
さすがに猫要素はゼロに等しい作品ですが、猫の横でまったり観るのも悪くないですよ。

まん丸に丸まって、幸せそうにスヤスヤ…
  • IMDb『ソーシャル・ネットワーク』
    キャストやスタッフの詳しい情報、ユーザーからの評価やレビューなどが充実しています。英語サイトですが、作品の撮影秘話やTrivia(トリビア)も多く、さらに深く知りたい方にはおすすめです。
  • この記事を書いた人

HAL8000

映画と猫をこよなく愛するブロガー。 多いときは年間300本以上の映画を観ていて、ジャンル問わず洋画・邦画・アニメ・ドキュメンタリーまで幅広く楽しんでいます。

専門的な批評はできませんが、ゆるっとした感想を気ままに書くスタンス。 ブリティッシュショートヘア×ミヌエットの愛猫ハルも自慢したいポイントで、レビューの合間に猫写真や日常もたまに紹介しています。

当ブログ「ねことシネマ」で、映画好き&猫好きの皆さんに楽しんでいただけると嬉しいです。
Filmarksはこちら → Filmarks

ぜひお気軽にコメントやリクエストをどうぞ!

-映画