映画『エターナル・サンシャイン』基本データ
- タイトル:『エターナル・サンシャイン』(原題:Eternal Sunshine of the Spotless Mind)
- 公開年:2004年(米国)、2005年(日本)
- 監督:ミシェル・ゴンドリー
- 出演:
- ジム・キャリー(ジョエル・バリッシュ)
- ケイト・ウィンスレット(クレメンタイン・クルシェンスキー)
- キルスティン・ダンスト(メアリー)
- マーク・ラファロ(スタン) など
- 上映時間:107分
- 主な受賞・映画祭出品:
- 第77回アカデミー賞(2005年)で2部門ノミネート 脚本賞受賞 など
- 視聴方法:
- 各種動画配信サービスで配信中、BD・DVD発売中
この記事でわかること
- 『エターナル・サンシャイン』のあらすじと基本的な見どころ
- 「記憶を消す」というSF的アイデアが生み出すドラマの魅力
- 非線形構成による巧みな脚本の仕掛け
- 再鑑賞で気づいたテーマの深さや印象の変化
- 個人的な感想&猫好き視点の一言
はじめに
こんにちは。当ブログ『ねことシネマ』にお越しいただきありがとうございます。今回は、2004年に公開され、アカデミー賞で脚本賞を受賞した映画『エターナル・サンシャイン』を取り上げます。実は私は数年前に一度だけ鑑賞したものの、その当時はあまりピンと来なかった作品でした。ところが最近、U-NEXTの「21世紀の最も優れた脚本特集」に本作が取り上げられているのを見かけ、「今なら違う印象を得られるかも」と思い立って再鑑賞してみたのです。
結果として、初見時よりも格段に「これは良い映画だ」と感じられました。SF的な設定にロマンチックな要素、さらに「記憶」をめぐる深いテーマが組み合わさり、人間の複雑な感情を浮き彫りにしていきます。過去の失敗や苦い思い出を「すべて消したい」と思ったことがある方も、少なくないのではないでしょうか。本作は、そんな私たちの心の隙間を優しく、でも鋭く突いてくる――そういう魅力を持った一作です。
あらすじ
失恋の痛みに耐えられなくなった主人公ジョエル(ジム・キャリー)は、怪しげな医療機関「ラクーナ社」を訪れ、なんと元恋人クレメンタイン(ケイト・ウィンスレット)の記憶を消す“治療”に踏み切ります。
治療が進むうちに、ジョエルは彼女との記憶を追体験しながら「本当に忘れるべきなのか?」と葛藤を深めていきます。次々と崩れ落ちていく風景やぼやけていく人々の顔――それはジョエルの内部世界そのものであり、彼の意思に反して思い出がどんどん消えていく様子がビジュアルに表現されます。やがてジョエルは、必死になってクレメンタインとの大切な記憶を守ろうと抵抗を試みるのですが……。

作品の魅力
「記憶を消す」というSFロマンス
一見するとただの恋愛映画のようでいて、近未来的な医療技術がさらっと盛り込まれているのが『エターナル・サンシャイン』のユニークなところ。とはいえSF要素が前面に出るわけではなく、あくまでジョエルとクレメンタインの切ない人間ドラマを後押しする装置として機能しているのも魅力です。
非線形構成と巧みな脚本
冒頭の電車シーンを「二人の初対面」と思い込んでしまうと、後半で「あれ? この場面はいつのこと?」と戸惑うかもしれません。
- 冒頭での“出会い”が、実は記憶消去後の“再会”だった
- クレメンタインの名前や「モントーク」という地名が、巡りめぐって重要なキーワードとして回収される
こうした円環構造により、観客も記憶の迷路をさまようジョエルと一緒に物語を追体験する仕組みになっています。まるでパズルを解くような知的刺激がありながら、最終的には「記憶と愛の本質」にたどり着く――脚本の巧みさが光るポイントです。
アナログ的な映像魔術
2004年といえばCGが既に普及していた時代ですが、本作の多くの“奇妙な”映像表現は、実際に現場でアナログ的手法を駆使して撮影されたといわれています。たとえば人の顔がぼやけて見える表現やジョエルが子供を演じるシーンなど、あえてCGに頼らず多重露光や強制遠近法を使うことで、リアルかつ不思議な光景を実現。観客は“夢の中をさまよう”ような没入感を味わいます。
ジム・キャリー&ケイト・ウィンスレットの化学反応
ジム・キャリーはコメディのイメージが強い俳優ですが、本作では控えめで内向的なジョエルを繊細に演じ、彼の孤独やナイーヴさを見事に体現しています。一方のケイト・ウィンスレットは、奔放で気まぐれなクレメンタインに色鮮やかな個性を吹き込みました。二人の対照的なキャラクターがぶつかり合うからこそ、出会いも別れも強く印象に残るのです。
「記憶こそが自分を形作る」メッセージ
誰しも「消したい過去」を抱えているもの。しかし、苦い失恋や失敗体験も含めて、それが今の自分の一部になっている――本作はそんなメッセージをロマンチックかつ切ないタッチで描き出します。記憶を失うことは一時的な救いになるかもしれませんが、同時に自分自身の大切な部分をも消してしまうのではないか。ラストシーンでは、再び惹かれ合うジョエルとクレメンタインを通じて「人間は痛みを伴っても愛を求める生き物」という、どこか救いのある真実が示されます。
まとめ
正直なところ、初見ではあまりピンと来なかった『エターナル・サンシャイン』。ところが改めて観直してみると、脚本や映像表現の巧みさに心を動かされ、「こんなに奥深い作品だったんだ!」と驚きました。SFロマンスという形を借りつつも、記憶と愛、そして喪失からの再生を優しく、だけど鋭く問いかけてくれる――そんな不思議な魅力を改めて実感したんです。
もし「昔観たけれど覚えていない」という方がいれば、ぜひ今の自分の視点でもう一度観直してみてください。思い出や考え方が変化したぶん、新たな発見があるかもしれません。
当ブログ『ねことシネマ』では、このように心に残る映画を時々掘り起こしてはご紹介しています。皆さんの中にも、「忘れたいけど忘れられない思い出」がきっとあるはず。そんなとき、本作をふと思い出していただけると嬉しいです。
当ブログ的“猫視点”のひと言
わが家の猫(ハル)は、過去の失敗をまったく気にしないように見えます。ご飯をこぼして叱られても、数分後にはケロッとして寝ている……。でも、“嫌なことをすぐに忘れる”のは猫の才能かもしれませんね。人間にも少しだけ、その切り替えの早さがあれば――と考えるときがあります。

- IMDb『エターナル・サンシャイン』
キャストやスタッフの詳しい情報、ユーザーからの評価やレビューなどが充実しています。英語サイトですが、作品の撮影秘話やTrivia(トリビア)も多く、さらに深く知りたい方にはおすすめです。